北朝鮮は近日中にミサイル実験を行うと予告しており、その後に核実験を行うという観測もある。韓国大統領選に対しては、金正恩第1書記の指示の下、400人のタスクフォースを組んで、北朝鮮寄りの左派政権が生まれるよう工作を仕掛けているという指摘もある。しかし、最近の韓国世論は、北朝鮮の工作に対しての危機意識を欠いている。

北朝鮮は2010年の韓国延坪島砲撃事件などに対する謝罪を怠っているにもかかわらず、韓国の大統領選の二大候補は、北朝鮮との対話に前提条件を設けない方針で一致。選挙戦では外交問題よりも、格差是正などの「経済の民主化」が争点となっている。

こうした危機意識の欠如を象徴していたのが、4日のテレビ討論会で起きた「事件」だった。討論会では二大候補である、与党セヌリ党の朴槿恵(パク・グンヘ)氏、民主統合党(民主党)の文在寅(ムン・ジェイン)氏のほかに、北朝鮮寄りで知られる統合進歩党(統進党)の李正姫(イ・ジョンヒ)氏が参加し、平等に時間を割り当てられた。

李候補の支持率は1%に満たないが、4月の国会議員選で躍進した統進党が現在でも6議席を有していることから参加が決まった。冒頭で、李候補は「朴候補を落とすために出てきた」と宣言し、朴候補に対する猛烈な個人批判を展開し、討論会をかく乱。朴候補の父である朴正煕・元大統領について、「元日本軍将校・高木正雄。軍事クーデターで執権し、韓日協定を強行した張本人だ」と主張した。北朝鮮のミサイル実験に関する議論では、韓国を「南側政府」という北朝鮮側が使う呼称で呼び、訂正する一幕もあった。

こうした候補が討論会に登場すること自体、北朝鮮の脅威に鈍感な韓国世論の「末期症状」をさらけ出していると言える。6日付の韓国・東亜日報紙の社説は、統進党との連携を進めてきた最大野党の民主党と、北朝鮮寄りの議員への追及を怠ってきた与党セヌリ党には両方とも責任があるとして、以下のように論じた。

「4日の討論は、自由民主主義と市場経済、そして法治を根幹とする大韓民国の法秩序を揺さぶり、国家安保まで脅かす従北勢力を制度政治から締め出すことこそ政治改革の核心課題であることを逆説的に示した」

一方、韓国メディアは、安倍晋三・自民党総裁の再登板や石原慎太郎・前東京都知事の国政進出などで、日本が「右傾化」していると批判する。しかしこれは、北朝鮮や中国からの脅威に対する健全な国防意識の高まりにすぎず、韓国側が言うような「日本が軍国主義に戻る」という次元の話ではない。

韓国は核開発を続け、隙あらば工作を行って韓国政府を転覆しようとする北朝鮮と隣り合わせであることにもっと危機感を持つべきである。北の脅威から自由と民主主義を守るべく、韓国こそが日本を見習って、「右傾化」「保守化」すべきだ。また、歴史問題をむやみに蒸し返して人気取りするのを止め、北に対する国防・安全保障問題で日本と共闘すべきである。

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