大阪で7月、三重で9月に、市のホームページや電子掲示板などに犯行予告が書き込まれた事件で、逮捕された4人の人物のパソコン(以下、PC)がウイルスに感染していたことが分かったため、誤認逮捕だったと見られる。警察はIPアドレスを頼りに掲示板などへの書き込み元のPCを割り出していたが、その手法の限界を露呈した形だ。

IPアドレスとは、ネット上のPCの住所のようなもの。逮捕された4人のPCが遠隔操作ウイルスに感染していたことが分かり、誤認逮捕の可能性が高まった。

遠隔操作ウイルスは海外では1999年ごろに登場し、2008年ごろから急激に進化した。今は世界各国で被害が確認されている。

国内のPCが海外から乗っ取られた場合は、また今回のように誤認逮捕につながる恐れがある。昨年7月、海外のPCからのサイバー攻撃により、衆参両院で国会議員などのPCやサーバー63台がウイルス感染しその情報が流出した事件では、その情報の送り先の一つが中国人民解放軍の幹部でもある元大学院生だったことが判明している。

昨年の事件と今回の事件の対応を見ても、日本の警察のサイバー犯罪対策は、今のところあまり期待できない印象だ。一方、アメリカはどうか。

パネッタ米国防長官は11日ニューヨークで講演し、「(大都市の水道を汚染させるなど)甚大な破壊や米国人の犠牲をもたらすサイバー攻撃が差し迫っていると探知した場合、『大統領の命令で国家防衛の行動をとる選択肢を持つ必要がある』」と語り、また、脅威に関する情報共有や対策で同盟国との協力を進める意向を示している。

欧米には、情報交換を緊密化する「サイバー犯罪条約」がすでにあり、35か国が批准発効している。日本は国内法が未整備だったことから批准が遅れ、今年11月1日からようやく正式参加となる。この条約参加を機に欧米との協力も深めて、サイバー犯罪対策でも中国などの脅威に対して自衛力を高めていかねばならない。(居)

【関連記事】

2012年9月20日付本欄 中国のサイバー攻撃から日本を守れ 国防機能の無力化の恐れも

http://www.the-liberty.com/article.php?item_id=4882

2012年7月4日付本欄 サイバー攻撃対策 厳しい国際環境に耐えうるか

http://www.the-liberty.com/article.php?item_id=4540