ミャンマーで、民主化運動指導者のアウン・サン・スー・チー氏が率いる野党・国民民主連盟(NLD)が連邦議会補欠選挙で45議席中43議席を獲得する「圧勝」をしたことを受けて、旧軍政権に長らく自宅軟禁状態だったスー・チーさんも、6月に国会に初登院するという。
半世紀にわたって国民の自由と権利を奪う軍事政権が続いてきたミャンマーが、混乱なく改革を進めるためには、軍と、上下両院で8割以上を占める旧軍政系の与党・連邦団結発展党(USDP)と、NLDの間で調整が行われ、2015年の総選挙後に連立政権が樹立されることが望ましいと言われている。
民主化の兆しが見えてきたことで、アメリカのクリントン国務長官は4日、「民意が示された」ことを評価し、制裁緩和措置を取って同国との関係正常化を図ることを、いち早く表明した。
同じ4日には、カンボジアの首都プノンペンで開かれた東南アジア諸国連合(ASEAN)首脳会議で、ミャンマーの民主改革を支援し、全ての制裁を即時解除するよう国際社会に要請する議長声名がまとめられた。
日本人にとってミャンマーは、「ビルマ」という国名での方が馴染みがあり、国語の教科書にも採用されることがある『ビルマの竪琴』はよく知られている。
アウン・サン・スー・チー氏の父、アウン・サン将軍は「ビルマ建国の父」と呼ばれて、今も国民に敬愛される存在であり、ビルマのイギリスからの独立運動の指導者として、日本との関係も深かった。
玄葉光一郎外相が「ミャンマー政府の更なる民主化、国民和解及び経済改革に向けた取組を引き続き後押しする」と、談話を発表したほか、民間ではローソンが、日本の大手コンビニエンスストアで初めて、ミャンマーに進出する方針を明らかにしている。
少数民族の紛争も耐えないが、国民の9割が上座部仏教徒ということもあり、東南アジア諸国との連携で「中国包囲網」を確立するためにも、今後の改革に注目したいところだ。〈宮〉
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