映画大好き人間の皆様、こんにちは。
「昭和の生き方」シリーズ、昭和10年代の『姿三四郎』と20年代の『二十四の瞳』に続き、今回はザ・昭和30年代映画ともいうべき『キューポラのある街』(昭和37=1962年)を選びました。多くの日本人が貧しくても明日への希望を抱いていた、高度経済成長期の上向きの空気感と、その希望を一身にまとった吉永小百合──。シニア世代には懐かしく、若い世代は「こんな時代があったのか」と生活感覚で昭和史を知ることができます。
(あらすじ)
キューポラという独特の煙突が立ち並ぶ鋳物の街、埼玉県川口市。中学三年生のジュン(吉永小百合)は、鋳物職人の父(東野英治郎)が仕事を解雇され、六人家族の生活は苦しい。彼女は県立女子高への進学を希望しており、学費を稼ぐためアルバイトを始めるが、修学旅行の費用をめぐって家の貧しさに打ちひしがれ希望を失いかける。そんなジュンを、隣に住む克巳(浜田光夫)、教師、同級生らが温かく励まし、ジュンは新たな進路を見出す。
当時の高校進学率は6割程度で、進学者の4割は定時制でした。筆者も昭和40年ごろ、年上の従姉妹が高校に通えて恵まれていると親が話していたのを覚えています。実質的に高校全入時代となった平成以降の世代の読者は本作を観れば、祖父母の時代には昼間の高校で学べること自体が憧れだったと知り、高校や大学で学べる(学べた)ことの有り難さが改めてわかるでしょう。
ジュンの家は狭い長屋で、赤ん坊の泣き声で受験勉強ができません。一方で、隣の住人が気軽にガラス戸を開けて訪れ、弟たちは隣家に上がってテレビを見せてもらうなど、近所づき合いは現在では考えられないほど親密です。登場人物たちは良くも悪くもナマの感情をぶつけ合います。物質的には豊かでも人間関係の薄い現代とは対照的で、こうした昔の映画を観ると今の社会の光と影が浮かび上がります。
もう一つ時代性がにじみ出ているのが社会主義礼賛ムードです。ジュンの父は労働組合のおかげで復職し、ジュンが見学した工場の女工たちは昼休みのコーラスで労働者の連帯を歌っています。当時のまだ貧しかった日本人が労働運動など社会主義的思想に惹かれた理由も、本作を観ると少しわかる気がします。特筆すべきは、ジュンや弟と交流のある在日朝鮮人一家が帰還事業で、大勢の同胞から祝福され北朝鮮に旅立つ光景です。北の惨状はまだ知られておらず、彼らの顔には不安と共に希望が──。映画のシーンではありますが、今となっては貴重な映像です。
14歳でデビューし、すでに20本以上の映画に出演していた吉永小百合は、本作で史上最年少の17歳でブルーリボン賞主演女優賞を受賞し飛躍を遂げました。それ以降も90本以上の映画に出ていますが、代表作はこの『キューポラのある街』だというのが衆目の一致するところです。『ローマの休日』のオードリー・ヘップバーンのように、あるタイプの女優は若き日に彗星の如く現れ、一本の映画で、磨きたてのダイヤモンドのような輝きを人々の目に焼き付けます。本作の吉永小百合がまさにそうで、はつらつとしたオーラは64年後の今も古びておらず、筆者は本作を観るたび、この両親からこんな美少女が生まれるはずがないと思ってしまいます(笑)。そんなファンタジー性(?)も昭和の観客の憧れを満たしてくれたのでしょう。
さて、ジュンに本当の希望をもたらしてくれるのは、社会主義とは異なる原理です。高校に行きたいと訴えるジュンに、父親は酔った勢いで吐き捨てるように言います。
「ダボハゼの子はダボハゼだ! 中学出たら皆、働くんだ」
ダボハゼとは、鯛などの高級魚に比べるべくもない雑魚(ざこ)で、家柄が低く貧しい人間をののしったり自嘲したりする言葉です。しかしジュンは教師に諭され、「人はどんな環境にあっても、勉強する気さえあれば道を開いていける」ことに目覚めます。大川隆法・幸福の科学総裁は英語説法『El Cantare in Kawashima』で、自身が田舎の平凡な環境に生まれたことを踏まえ、こう説いています(和訳)。
「肝心なことは、『環境そのものは問題ではない』ということだと思います。人は、どんな場所からでも、どんな機会を捉えてでも、信仰と努力によって変わることができます。自分の大いなる運命を信じてください」
ジュンは終盤、笑顔で明るく言います。「あたしはダホハゼじゃないよ」。その若いひたむきさに戦後17年目の日本人は共感し、勇気と希望を見たことでしょう。唯物論の社会主義ではなく、未来を信じる個人の自助努力によって、どこからでも運命を開いていくことは可能です。私たちは昭和の人々が基礎を築いてくれた今の豊かさに感謝し、いっそう学びの意欲を奮い立たせ、ジュンに負けず頑張ってまいりましょう。
(田中 司)
『キューポラのある街』
- 【スタッフ】
- 監督:浦山桐郎 原作:早船ちよ
- 【キャスト】
- 出演:吉永小百合 浜田光夫 東野英治郎ほか
1962年 | 日活 | 99分
【関連書籍】
幸福の科学刊 『El Cantare in Kawashima』 大川隆法著
※書店では扱っていません。お問い合わせは幸福の科学 聖地エル・カンターレ生誕館まで。























