中国が移転を検討しているロンドンの中国大使館(画像:"Building of Chinese Embassy in the Portland Place in London, June 2013 (2)" by Chmee2 is licensed under CC BY-SA 3.0.)

 

《ニュース》

イギリス政府は20日、長らく物議を醸していた「中国の巨大大使館」の建設計画を承認すると発表しました。

《詳細》

新たに大使館が建設される場所は、首都ロンドンの中心部です。中国政府が2018年に用地を購入しており、広さは約2万平方メートルと、大使館としては欧州最大となります。

しかし、金融街を結ぶ重要な通信ケーブルの上に建設されるなど、スパイ活動の拠点になるのではないかとの懸念から反対の声が高まっており、建設予定地の近隣住民は今月17日にも大規模なデモを行いました。イギリス政府はこれまで判断を3度にわたり延期してきましたが、「決定にあたりすべての重要な事項が考慮された」として、建設を承認しました。

住宅省は決定書で、大使館建設がケーブルに絡む問題は起こらず、安全保障を担当する内務省や外務省などの機関からも、ケーブルとの近さを理由とした開発計画への懸念や意義は出なかった、と述べています。また、今回の大使館建設に伴い、国内7カ所にある中国の外交施設を1カ所に集約することで、「安全保障上の明確な利点」が生まれるとしています。

一方で、情報局保安部(MI5)と政府通信本部(GCHQ)のトップらは、内務相と外相への連名の書簡で、大使館の計画は「あらゆる潜在的リスクを完全に排除できると期待するのは現実的ではない」とも指摘しています。

大使館建設をめぐっては、さまざまな批判が巻き起こっています。中でも取り沙汰されているのが、「通信ケーブルの安全保障リスク」です。

建設に反対してきた政権与党の労働党議員であるサラ・チャンピオン氏によれば、建設計画について、米ホワイトハウス、オランダ政府、スイス議会、スウェーデン議会が懸念を表明しているとのことです。

中国共産党に関する米下院特別委員会のジョン・ムーレナー委員長(共和党)は、「イギリスの決定は常識に反する」「中国は海底ケーブルの切断も疑われており、重要インフラの上にある土地に大使館を建設することは深刻な安全保障上のリスクになる」と批判しています。

また英紙テレグラフは承認直前に、非公開の大使館設計図を独自で入手したとスクープ。それによると、「イギリスの最も機密性の高い通信ケーブルに驚くほど近い場所に"秘密の地下室"が建設される可能性がある」といいます。サイバーセキュリティ専門家で英サリー大学教授のウッドワード氏も「中国は地下室の用途を明らかにしようとしない。機密扱いの通信機器が保管されている可能性もあるが、それは多くの罪を隠蔽する可能性がある」「もし私が彼らの立場だったら、玄関先にケーブルがあることは大きな誘惑になるだろう」と指摘しています(1月20日付)。

イギリスに亡命してきた中国の民主活動家や香港人からも、失望の声が上がっています。過去にイギリスでは、マンチェスターにある中国領事館前で行われた抗議活動の最中、香港の反体制活動家が敷地内に引きずり込まれ、暴行を受けて重傷を負った事件も起きています。

《どう見るか》