国際政治学者

佐久間 拓真

(ペンネーム)
国際政治の中でも特に米中関係、インド太平洋の安全保障、中国情勢を専門にし、この分野で講演や執筆活動、現地調査などを行う。

中国とフィジー共和国の関係は、近年急速に緊密化しており、特に経済分野において中国の影響力が著しく増大している。これは、中国が展開する一帯一路構想と、太平洋島嶼国に対する戦略的な債務外交の一環として捉えられている。表面的には開発援助や投資の形を取るこの関係は、実態としてフィジーの主権と経済的自立を徐々に侵食する経済的侵略の様相を呈していると指摘されている。

港湾、道路、政府庁舎に低金利の融資?

中国によるフィジーへの関与の最も顕著な特徴は、巨額のインフラ投資とそれに伴う融資である。中国は、港湾、道路、政府庁舎といった主要なインフラプロジェクトに対し、比較的低いとされる金利で融資を提供してきた。フィジーのような小規模な島嶼経済にとって、これらのプロジェクトは魅力的に映る。しかし、融資の条件や契約内容は不透明な部分が多く、返済が困難になった際の対応についても曖昧さが残る。

この融資構造は、国際社会から「債務の罠」として懸念されている。フィジーが中国からの借款を返済できなくなった場合、中国は融資の担保として重要インフラや天然資源の権益を獲得したり、融資の借り換えや追加融資を通じてフィジーに対する政治的・経済的な影響力をさらに強化したりしようとする可能性がある。