国際政治学者
佐久間 拓真
(ペンネーム)
国際政治の中でも特に米中関係、インド太平洋の安全保障、中国情勢を専門にし、この分野で講演や執筆活動、現地調査などを行う。
太平洋の要衝に位置するパプアニューギニア(PNG)は近年、地政学的な競争の舞台として国際的な注目を集めている。
この国の経済状況を語る上で避けて通れないのが、中華人民共和国からの大規模な経済支援、特にインフラ開発を目的とした借款の存在である。オーストラリアや米国などの伝統的なパートナーが警戒感を強める中、PNGは「中国による経済的侵略」とも形容される厳しい財政状況に直面している。
目まぐるしいインフラ改善と泥沼化する財政状況
PNGと中国の関係が深まった背景には、2010年代半ばからの中国の巨大経済圏構想「一帯一路(BRI)」がある。PNG政府は、老朽化したインフラの刷新や資源開発の推進を目的に、中国から多額の融資を受け入れた。首都ポートモレスビーの国際会議場「APECハウス」や主要幹線道路の整備など、目に見える形でインフラが改善されたことは事実であり、国内の経済発展への期待を高めた。中国企業の進出は、建設現場での雇用創出といった短期的な経済効果をもたらしたのである。
しかし、その支援の多くは贈与ではなく、返済義務を伴う借款(ローン)の形をとっている。国際開発金融機関や伝統的なドナー国からの借入れに加え、中国からの融資が積み重なった結果、PNGの公的債務は急増した。特に、一部の期間では、二国間政府債務残高において中国が圧倒的な最大の債権者となったことが報じられている。
この債務の増大は、PNGの財政状況を急速に悪化させ、政府債務の対GDP比は国内の法的基準値を上回った。年間予算の大部分が債務の元本と利息の返済に充てられるという、財政の硬直化を引き起こしている。2023年までに中国への年間債務返済額が大幅に増加すると予測された報道は、この危機的な状況を如実に示している。






















