《ニュース》

英フィナンシャル・タイムズ(FT)はこのほど、独メルツ首相主導の人手不足への対応策として、定年後も働くドイツの高齢者は、月2000ユーロ(約35万円)まで非課税で収入を得られるようになりそうだと報じました。FTは法案の草案を入手したとしています。

《詳細》

ドイツは、欧州の中でも特に高齢化が進んでいます。2035年までに約480万人が定年を迎える見通しで、熟練した労働者不足が深刻化しています。また、ドイツは経済開発協力機構(OECD)加盟国の中で最も平均労働時間が短く、パートタイムの労働者の割合は3割に達しています(OECDの推計)。

そこで、独政府は上記の施策をとることで、人手不足を補おうとしています。

ギリシャでは、「年金受給者が年金を全額受け取りつつ、追加収入には10%の軽減税率を適用できるようにする」という似たような政策を導入し、すでに成果を挙げています。ギリシャの働く高齢者は、23年は3万5000人でしたが、25年9月には25万人を超え、実に7倍以上に急増しています。

もしドイツで今回の施策が実行に移されたならば、雇用者と雇用主が給与分に即した社会保険料を支払うことになるため、厳しい財政状況の医療や年金制度も改善が見込まれると、FTは報じています。

一方で独政府は、同施策を来年1月1日に施行することで、年間8億9000万ユーロ(約1548億円)のコスト増になるとも試算。ドイツにはすでに、年金受給者でありながら働いている高齢者が約28万5000人います。彼らが収入非課税の恩恵を新たに受けた場合、単純計算すると税収が減少する額は8億9000万ユーロとはなります。

しかしドイツで施策が実行に移されたならば、定年後も、働ける限りは長期間働こうとするシニアが増える可能性は高いでしょう。ギリシャの事例で示されている通り、減税によって手取りが増えることは、働く上で大きなモチベーションになるのです。

《どう見るか》