フィリピン巡視船(手前)を追跡していた中国海警局の巡視船(右奥)が、中国海軍の駆逐艦(左)に衝突する様子(画像:フィリピン沿岸警備隊のジェイ・タリエラ報道官のXより)。

 

《ニュース》

フィリピンの船に妨害行為をしていた2隻の中国船が"衝突"する事故がこのほど発生し、国際的な物議を醸しています。

《詳細》

事故が起きたのは、南シナ海のフィリピンの排他的経済水域(EEZ)内にあるスカボロー礁付近です。中国は2012年以降、スカボロー礁の領有権を一方的に主張して実効支配しており、フィリピンとの緊張関係が続いています。中国が主張する領有権については、国際仲裁裁判所が2016年に「根拠がない」との司法判断を下しています。

そうした中、今月11日に、フィリピン沿岸警備隊が漁業者に燃料を配給するために派遣した複数の船舶が、「第二の海軍」である中国海警局の船による妨害を受けます。フィリピン側の発表によると、海警の巡視船が沿岸警備隊の船を追跡し、放水するなどの妨害行為を行ってきたといいます。

その妨害行為の最中、フィリピン船を高速で追跡していた海警船の対角線上から、中国人民解放軍海軍の駆逐艦が侵入します。フィリピン船は駆逐艦の「危険な動き」を避けようと間一髪で回避し、駆逐艦と海警船が衝突。海警船の船首が大破し、航行不能になったと見られています。フィリピン当局はただちに中国側に「救助する」と無線で伝えましたが、応答はなかったとのことです。なお、フィリピン側に被害はありませんでした。

【フィリピン沿岸警備隊が公開した映像】

 

中国海警局の報道官は同日の声明で、「現場での操船は合法的なものだった」と主張しましたが、衝突には言及しませんでした。

中国による妨害行為はこれまで何度も行われてきました。2023年2月には、フィリピンの巡視船が中国海警の船からレーザー光線の照射を受けて、乗組員が一時視力を失うなどの被害が発生。24年にも、海警船がフィリピンの船に放水や衝突を試み、負傷者を出しています。

《どう見るか》