全国公開中
《本記事のポイント》
- 霊的対話というイギリス・スピリチュアリズムの伝統
- 死は単なる終わりではなく、新たな旅立ち
- 残された者が前向きに生きることの大切さ
病に侵され余命わずかな15歳の少女チューズデー。母ゾラと暮らす彼女の前に、しゃべって歌う変幻自在な1羽の鳥が舞い降りる。それは地球を周回して生きものに命の終わりを告げる「デス」という名の鳥だった。
チューズデーはデスをジョークで笑わせ、外出中のゾラが帰ってくるまで自分の命を引き延ばすことに成功する。やがて帰宅したゾラは鳥の存在に畏れおののき、愛する娘のもとから遠ざけるべく暴挙に出るが……。
クロアチア出身の新鋭ダイナ・O・プスィッチが長編初のメガホンをとる。「恋人はアンバー」のローラ・ペティクルーがチューズデー、テレビドラマ「Veep ヴィープ」のジュリア・ルイス=ドレイファスが母ゾラを演じた。
霊的対話というイギリス・スピリチュアリズムの伝統
命の終わりを告げる存在として知られているのは、一般的には、やはり死神だろう。この映画では、その死神を"インコ"に似た怪鳥として現代に蘇らせ、改めて、霊的な存在との対話と、この世に生きることの意味とを問いかけている。
舞台となっているロンドンは、19世紀から霊界通信を始めとした様々な心霊現象が数多く起き、近現代のスピリチュアリズムの震源地として知られたところでもある。
ロンドンを中心にして始まったスピリチュアリズムは、霊界で計画されたものであったことを、大川隆法幸福の科学・総裁は著書『神秘の法』の中で次のように指摘している。
「イギリスのロンドンなどでも霊現象が盛んになっていきました。たとえば、『テーブル・ターニング』といって、テーブルを手で軽く押さえておくと、テーブルが自動的に動く現象もあります。その際、約束事を決めておくと、霊とのあいだで会話が成り立つこともありました。
アルファベットの二十六文字を順番に指していき、BならBのところで霊がトントンと音を立てればBになり、それを続けていくと一定の綴りになって、霊の言葉になるのです。これは日本の「コックリさん」の大きなものでしょうか。そういうことを行ったり、物を空中に浮揚させてみたりと、いろいろな物理現象を起こしました。これは、唯物論とはまったく正反対のことを示すために起こしたことなのです」
死神は霊界に実在するとされる。こうした霊的存在との対話をユーモラスに描いたところに、イギリスのスピリチュアリズムの伝統が今も脈脈と息づいていることを感じさせる。
死は単なる終わりではなく、新たな旅立ち
映画では、母親のゾラが娘の死を避けるべく、デスを焼き鳥にして食べてしまう。しかし、デスを平らげたことでゾラは巨大化し、生きとし生けるものに「定め」としての死をもたらすというデスの役割を肩代わりする羽目になる。
チューズデーを背中に背負いながら、世界中を巡り、死ぬべき定めにある人々や生き物に死を現実化させる姿が、幻想的に描かれている。実はデスがチューズデーに関わっている間に、世界では、死が"先送り"されてしまい、死ぬべき人が生き続け、大混乱が起きていたのだ。
ようやく死を迎えることができた人々の安堵の姿や、死後の世界に旅立つ喜びの姿を目の当たりにして、ゾラは死が単なる終わりではないことを理解し始める。
こうした死の意味について、大川隆法総裁は『エル・カンターレ 人生の疑問・悩みに答える 地球・宇宙・霊界の真実』で次のように語っている。
「死というものは、地上の人間から見れば『不幸』に見えることがありますが、あの世から見れば、これはまた『誕生』であるのです。新たな仲間の誕生であるのです。
地上で見事に生き切って、その使命を終えた方が帰ってくるということは、彼らにとっては誕生祝いでもあるし、また、入学祝いでもあるのです。『やっと帰ってこられたね』ということであるのですね」
残された者が前向きに生きることの大切さ
映画のラストでは、娘の死後、生きる目的を失って、もぬけの殻のように茫然自失となったゾラのもとに、再びデスが訪れる。
デスはゾラに向かって、霊界にチューズデーがいることを告げ、後に残されたゾラの思いや行いがチューズデーの霊界での人生に大きな影響を与えていることを教える。
愛する娘が死後の世界で生き続け、自分の人生を見守り、心の中でつながり続けることに希望を見出したゾラの姿がとても印象的だ。
あの世が存在するからこそ、生きている間は積極的であるべきことについて、大川隆法総裁は著書『地球を包む愛』の中で次のように指摘している。
「人生がこの世限りなんて、絶対の間違いです。死んでからあとが本当の人生です。そのための訓練期間として、この地上期間はあるのです。
そのなかでこそ、みなさんは、苦悩のなかで、いろいろな試練のなかで戦い続けて、『この苦しさのなかで人々に愛が与えられるか』ということを試さなければならないと思います」
死神という古典的な霊的存在を現代に蘇らせたこの映画は、「死」という忌み嫌われるテーマと正面から向き合うことが、逆説的に、この世で前向きに生きることにつながることを浮き彫りにしている。
『終わりの鳥』
- 【公開日】
- 全国公開中
- 【スタッフ】
- 監督:ダイナ・O・プスィッチ
- 【キャスト】
- 出演:ローラ・ペティクルーほか
- 【配給等】
- 配給:ハピネットファントム・スタジオ
- 【その他】
- 2024年製作 | 110分 | イギリス・アメリカ合作
公式サイトhttps://happinet-phantom.com/tuesday/
【関連書籍】
いずれも 大川隆法著 幸福の科学出版