ウクライナ戦争以降、「プーチン露大統領は侵略者であり、邪悪な独裁者である」という見方が世界中に広がっている(以下、敬称略)。

だが、プーチンは長年にわたり、北大西洋条約機構(NATO)の東方拡大が、ロシアの国防を脅かすことに警告を発してきた。それに加え、ロシア国境近くのウクライナ東部に住むロシア系住民が、ウクライナ政府の弾圧にさらされていた。彼らを救うため、プーチンは今回の戦争に踏み切らざるを得なかった。

そうした背景を無視して、悪者のプーチン像を発信し続ける欧米メディアの報道を鵜呑みにしてはならない。

本誌4月号の「真実のプーチンと聖武天皇 ─過去世が示す魂の実像─」では、メディアが正当に評価しないプーチンの信仰心を紹介した。今回は、本誌では取り上げ切れなかった「教育観」に焦点を当て、プーチンの知られざる一面を紹介してみたい(全2回のうち、今回は前編)。

「学校は絶対的な価値を取り戻さなければならない」

プーチンは2012年12月の議会演説で、「ソ連崩壊後の大混乱からロシアが立ち直り、国家再建がなされた」と宣言。次の段階として、より豊かな社会をつくるとともに、ロシア民族の力の源泉となる「伝統的な価値観」を守ることを訴えた(2012年12月12日付ロシア大統領府英語版ウェブサイト(議会演説)。

演説でプーチンは、「ロシア社会は慈善、共感、思いやり、支援、相互扶助といった精神的な価値の明白な欠如に苦しんでいる」「ロシアの歴史を通じて常に我々を強く、覇気あるものにしてきたもの、我々が常に誇りにしてきたものが失われている」と嘆く。

他方、ロシア軍を例に挙げ、彼らの強さは「英雄たちの勇敢さや無私の精神の模範によって支えられてきた」とも語った。

つまり、ソ連誕生から崩壊までの混迷の時代に、国民が生きる道を見失ったことを問題視し、ロシア民族が守り続けてきた「伝統的な価値観」の擁護を訴えたのだ。

中でも、その精神的な価値を伝える教会や学校を重視している。

「学校は絶対的な価値を取り戻さなければならない。そのためには、教育内容を刷新する必要がある」

プーチンは「近年、学校が子供や青少年の形成に及ぼす影響力が弱まっている」とし、「インターネットや電子メディアという強力なライバルが現れた」と指摘。情報が洪水のように垂れ流される中で、生徒が「人格、個性を形成する」ためには、人として生きる上で基軸となる「絶対的な価値」を教えなければならないと考えた。

その一環として、翌13年、全ての学校で宗教教育が必修化されることになる。ただプーチンは、全体主義的な統制を奨励しない。国民が自発的に自由を正しく用いるためにこそ、教会や学校での教育が重要だとした。

「法律は道徳を守ることができるし、そうすべきだが、法律が道徳を植え付けることはできない。政府が人々の信念や見解に干渉しようとする試みは、全体主義の表れである。これは我々にとって完全に受け入れがたい。そうした道を歩むつもりはない」

「生徒が才能ある熱心な教師と出会えるかどうかで、その生徒の人格、将来がほぼ決まってしまう」

特に興味深いのは、大統領府ウェブサイトの中で、「生徒が才能ある熱心な教師と出会えるかどうかで、その生徒の人格、将来がほぼ決まってしまう」という言葉が大きく特筆されていることだ。