《ニュース》
オバマ政権以降、アメリカでは、人種や性別などの「多様性、公平性、包摂性」(ダイバーシティ、エクイティ、インクルージョン、略してDEI)を重視する取り組みが推進されてきました。しかしこの数カ月の間に、DEIの強化を打ち切る企業が増えています。
《詳細》
例えば、小売世界最大手の米ウォルマートは25日、多様性推進策を一部撤回すると発表しました。
ウォルマートは今後、サプライヤーと契約を結ぶ際に多様性について考慮することや公式なコミュニケーションの場で「DEI」という用語を使うことをやめ、公平性に関する従業員研修を制限することを表明しました。
また、子供を対象とした性的およびトランスジェンダー向け商品を販売しないことも決め、ウォルマートが2020年に5か年計画で立ち上げた非営利団体「人種平等センター」への資金提供を停止するといいます。
DEIに反対する保守活動家のロビー・スターバック氏は、FOXビジネスの取材に「ウォルマートはアメリカ最大の雇用主です。ウォルマートから"ウォークネス"(人種差別や格差是正などを声高に訴える人々を示す俗称)を排除することは、サプライヤーの下流にまで影響を与え、アメリカ企業の基調をつくることになります」と語っています(25日付)。
また11月初め、米航空機大手「ボーイング」の新CEOに就任したケリー・オルトバーグ氏がひっそりとDEI部門を解体していたことも、ジャーナリストのクリストファー・ルフォ氏によって報じられています。ルフォ氏が取材したボーイング社の内部関係者は、新CEOがDEIを廃止した理由について、「DEIのイデオロギーは航空機の製造には役に立たないためだ」という趣旨のことを語っていました(12日付シティ・ジャーナル)。
他にも、この数カ月の間に、米自動車メーカー「フォード・モーター」、米住宅リフォーム・生活家電チェーン「ロウズ」、米二輪車大手「ハーレーダビッドソン」、農村生活用品の小売「トラクター・サプライ」など、米大企業10社以上がDEI関連の取り組みを撤回または縮小することを表明しています。また、トヨタ自動車も10月、LGBTQイベントの支援などを停止すると発表しました。
こうした動きの背景には、前出のロビー・スターバック氏などの保守活動家が、DEIを推進する企業に対し、企業にとって不利となるキャンペーン(不買運動など)を計画するなど、圧力をかけていたことがあります。
《どう見るか》