4月27日(土)より、新宿K's cinema ほか全国順次ロードショー

《本記事のポイント》

  • 植民地時代から現代まで続いた、ペルー社会の封建的社会体制
  • ペルー軍と将軍による"革命的"社会改革とその顛末
  • 貧困と差別を問題視する人々への処方箋とは

本作は日系のフジモリ大統領で知られるペルーの現代政治史を描いたドキュメンタリー映画。2019年に公開され、同国内で9万人以上を動員し、ドキュメンタリー史上最大のヒット作となった。1968年に軍事クーデターを起こし、封建的な社会体制を改革すべく自ら「革命」を掲げた将軍たちの社会改革の経緯から、苦難が続く現代までの道のりが描かれている。

監督のゴンサロ・ベナべンテ・セコ氏は1982年、ペルー・リマ生まれの映画・演劇・テレビの監督・脚本家。映画製作会社AUTOCINEMAのディレクター兼ゼネラルマネージャーである。監督・脚本家として多くのテレビ番組制作にも関わる。戯曲『El rastro...』はペルー文化省から全国ニュー・ドラマツルギー賞(2014)を与えられ、2015年に出版された。

植民地時代から続く、ペルー社会の封建体制

本作の前半部では、スペイン人による征服と先住民支配の歴史を遡る。たった40の白人家族に支配されているともいわれていた、圧倒的に不平等なペルーの封建的社会構造が丹念に描かれている。

少数の白人支配層と圧倒的多数のインディオ、黒人、メスティソ(混血)からなる階層構造や土地所有制(ラティフンディオ)、強制奉仕労働(オセルビドゥン)など、数世紀にわたる植民地時代に形成された社会構造が、ほんの60年前まで続いていたことには驚かされる。当時、インディオたちは大農園所有者たちの"所有物"と見なされ、給与は支払われず、文盲の人々に投票権を禁じる法律が70年代まで存在したという。

こうした社会への不満から、60年代から共産主義勢力の浸透が著しく、中南米ではキューバを始め、共産主義勢力による暴力革命が吹き荒れた。その影響を受けてペルーでも革命運動が組織され、国民解放軍(ELN)、革命左翼運動(MIR)がゲリラ活動を活発化。アメリカはこうしたラテンアメリカの共産化を食い止めるべく、ケネディ大統領が「進歩のための同盟」を掲げて支援に乗り出した。本作ではこうした国際的な動きも丁寧に描かれている。

ペルー軍と将軍による"革命的"社会改革とその顛末

本作の山場は、1968年にフアン・ベラスコ・アルバラード将軍(1910~1977)クーデターを起こして実権を握った事件と、その翌年にベラスコ軍政が実行した農地改革の実効性を巡る経緯である。

ベラスコ軍政は国会を解散し、マスメディアを抑圧。"革命政府"を名乗った軍政は、米国資本の石油会社接収、農地改革による大土地所有の解体、重要産業の国有化、ケチュア語(先住民族の言語の一つ)の公用語化等、社会を一変させる措置を次々にとった。

特に本作が焦点を当てるのは、革命の翌年導入された農地改革法である。18世紀のインディオ叛乱指導者トゥパク・アマル二世の言葉だとされる「農民よ、もはや地主たちが諸君らの貧しさを食い物にすることはない」という演説とともに、農民先住民はこの日から解放された自由市民になると宣言された。このベラスコ演説を始め、本作には当時の映像がふんだんに使われていて、この社会実験が追体験できる。

ラテンアメリカ政治社会史研究者の中沢知史氏は同映画パンフレットのなかで、「改革は全てうまくいったわけではなかった」と指摘している。

「特異な『ペルー革命』は、植民地時代から延々と続いた大土地所有制を解体して農民に土地を分配し、協同組合を組織して農業近代化を目指した」。しかし、「軍政が実際に分配した土地は当初の計画よりも少なく、恩恵にあずかれなかった農民先住民も多かった。期待したほど農業生産性は向上しなかった。革命前に政治を牛耳ってきた既成勢力の復権を阻止しようと、全国社会動員支援システム(SINAMOS)を創設し人々の政治参加を促したものの、官製の大衆組織という矛盾をどうしても解消できなかった。1970年代半ば頃からは経済情勢が悪化し、インフレによる生活苦から国民は街頭で抗議活動をはじめ、しばしば暴力沙汰に発展した」(同映画パンフレットの中沢氏寄稿文より)という。

このためもあって、80年代になるとセンデロ・ルミノソなどの共産主義武装テロ活動が台頭し、その反動として、「仕事、科学技術、勤勉」というスローガンを掲げた自由主義者フジモリ大統領が90年から政権の座に就いたのである。

貧困と差別を問題視する人々への処方箋とは

とはいえ現在もペルーでは、辞任や罷免による大統領の交代が相次ぎ、2016年から数えて6人目となるボルアルテ大統領が2022年に就任したが、依然として「混乱を極め出口の見えない袋小路」(前出パンフレットの中沢知史氏寄稿文より)が続いているという。

近代のさまざまな革命が失敗のうちに終わった理由について、政治学者のハンナ・アレントはマルクス主義の影響を挙げ、「種々の革命がフランス革命の影響下におかれ、特に社会問題の支配下に立たされることになった」(『革命について』より)ことを指摘している。

そして、成功した革命としてのアメリカの独立運動は、その革命が「自由の創設」を目的とし、自由の実際の内容とは「公的領域への加入」であって、「公民権の保障だけを目的としていたなら」、単なる解放で終わってしまったであろうことに注意を喚起している。

ペルーが経験してきたここ60年近い社会革命の経験は、「革命」が、マルクス主義という唯物論に根ざして、"権力の奪取"と"富の分配"を目的としている限り、常に不平不満を再生産するだけであり、決して自由で豊かな社会の実現にたどり着けないことを証明しているようにも見える。

かつてペルーでは、チチカカ湖周辺からマチュピチュのあたりにまで古代インカ文明が栄え、高度な精神文明が花開いていた。大川隆法・幸福の科学総裁の霊査において、古代インカの王リエント・アール・クラウドはこう当時を振り返る。

「今の人たちに比べれば、心の穢れはかなり少なかったと思うんですよ。現代文明のように、これほど唯物論に染まっているということはなかった」「『瞑想』とか『祈り』をやっているうちに、やっぱり、ある種のトランス状態のようなものを経験して、それぞれが神と感じるようなものというか、まあ、神ではなくて、本当は、それぞれの守護・指導霊でしょうけれどもね。これらあたりから、日ごろの自分の生き方についての反省の指針をもらうとか、ちょっと悔い改めることをさせました」 (『公開霊言 古代インカの王 リエント・アール・クラウドの本心』)。

同国に代表される"グローバルサウス"の国々、そして貧困と差別を問題視する先進国の人々にとって今必要なものとは、「社会問題の解決」に先立って、今一度、人間の本質である魂の平等性とその自由について、心静かに考えを巡らせることではないだろうか。

半世紀超が経過した現在も議論が続けられているペルー革命の功罪を描いた本作は、社会の改革と進歩とは何かについて、貴重な教訓を提供してくれる。

 

『革命する大地』

【公開日】
2024年4月27日(土)より、新宿K's cinema ほか全国順次ロードショー
【スタッフ】
監督:ゴンサロ・ベナべンテ・セコ
【配給等】
配給:ブエナワイカ
【その他】
原題:LA REVOLUCION Y LA TIERRA | 2019年 |ペルー |111分

【関連書籍】

公開霊言 古代インカの王 リエント・アール・クラウドの本心

『公開霊言 古代インカの王 リエント・アール・クラウドの本心』

大川隆法著 幸福の科学出版

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