2022年夏から秋以降、ロシア―ウクライナ戦争の膠着化と不透明な見通し、ロシア制裁を一因とする資源高の加速などから、アメリカを筆頭に「ウクライナ(支援)疲れ」が見られるとの報道が増えた。2023年8月4日発表のCNN世論調査では、アメリカ国民の55%はウクライナ追加支援法案に反対しており、バイデン政権との乖離が大きい。
「アンチトランプ疲れ」を指摘するニューヨーク・タイムズ
「疲れ」はウクライナ支援だけではない。2024年2月19日付のニューヨーク・タイムズ紙は、「アンチトランプ・バーンアウト(反トランプ・燃え尽き症候群):抵抗勢力は疲弊している」と題して、アメリカのリベラル系の人々の「アンチトランプ疲れ」について特集した。
その記事によると、アメリカの「アンチトランプ有権者」たちは、トランプ氏への怒りに燃え、危機感に駆られてきた。2018年中間選挙では下院の過半数を共和党から奪還し、2020年の大統領選ではバイデン氏を勝利に導き、2022年の中間選挙では驚くほどの強さを見せた。
しかし大統領選の本年、彼らは、トランプ氏への怒りとは別の感情、「疲弊感」に苛まれていると分析している。記事でのインタビューでは、首都ワシントンD.C.を拠点とする進歩派活動団体「Outrage(怒り)」の創始者は、「仲間たちは『怒り』でバーンアウト(燃え尽き)している」と語り、「前回の大統領選では、トランプを大統領の座から追い出すために、我々は必死で戦い、仲間たちも喜んで活動に参加した。しかし、今回の選挙は違う」「我々は、いわば、『危機』疲れに陥っている」と続ける。
ほぼ全ての代表的世論調査でトランプ氏はバイデン氏よりも優勢
バイデン氏は、今回の大統領選でも、2020年と全く同じ「アンチトランプ」を前面に打ち出し、「トランプは独裁者であり、民主主義への脅威だ」と訴えて、危機感と恐怖心を焚きつけて戦おうとしている。
しかし、多くのアメリカの有権者は、トランプ政権の4年間を振り返り、経済(通貨や物価の安定)、国境対策(不法移民流入の抑止)、犯罪対策、外交問題(海外での戦争の抑止、中国への強い姿勢)など、どの政策をとっても、バイデン政権の3年間よりも成功していて、現在よりも繁栄と平和を享受していたことに気づき始めている。
それが、最近の「バイデン対トランプ」の支持率調査でのトランプ氏優勢にも表れている。上記のニューヨーク・タイムズは、3月2日付で、シエナ大学と組んで実施した世論調査(New York Times/Siena polls)を発表し、「有権者はバイデンのリーダーシップに疑問を抱き、トランプを好んでいる」と題して、トランプ氏の支持率がバイデン氏よりも5%上回り(48%)、バイデン氏の「不支持率」は同調査で最高記録47%に達したことを報道した。
実際、今年2月の代表的な世論調査(CBS、FOX、WSJなど)のほぼ全てで、トランプ氏の支持率はバイデン氏を上回っている。リアルクリアポリティックス(選挙分析サイト)によると、2月以降に発表された21の代表的世論調査で、バイデン氏がトランプ氏に勝っているのは1つ(Quinnipiac大学調査)だけで、3月3日時点の世論調査の平均では、有権者の約47.8%がトランプ氏を支持し、バイデン氏を支持したのは約45.5%となっている。
画像はRealClearPoliticsのHPよりキャプチャー
なお、ニューヨーク・タイムズは、バイデン批判の記事を増やしており、2月10日付では、「問題は、バイデンが(大統領選から)撤退するかどうかではない。どのように撤退するかだ」、2月16日付では「民主党は、バイデンよりも良い選択肢がある」という記事を掲載しており、「アンチ・バイデン」路線が定着したとも言われる(2月21日付リアル・クリア・ポリティックス他)。