《ニュース》
香港の民主活動家、周庭(アグネス・チョウ)氏は3日、自身のSNSを更新しました。「香港には戻らない」と述べ、カナダへの事実上の亡命を宣言しました。香港の自由がすでに失われたことを象徴するような出来事です。
《詳細》
周氏は、2014年の香港民主化運動「雨傘運動」で普通選挙の実現を求めて闘ったことから、注目を集めました。民主派政党「香港衆志(デモシスト)」の中心メンバーでしたが、デモシストは20年の香港国家安全維持法(国安法)施行で解散に追い込まれます。
そして20年8月、国安法違反の容疑で逮捕。11月に無許可集会を扇動した罪などで禁錮10カ月の実刑判決を受け、21年6月に出所していました。出所直後には、真っ黒の画像と共に、「つらかった半年と20日がようやく終わった」とSNSへ投稿。その後は沈黙を貫いていましたが、今回の投稿で、出所後、初めて公式の情報発信を行った形です。
周氏は出所してからの3年間、再び警察に逮捕され、連行されるのではないかという不安や恐怖におびえる日々が続き、うつや心的外傷後ストレス障害(PTSD)などと診断されたことや、出所後もあくまで保釈身分のままに置かれ、パスポートも管理されたため出国できない状態が続いていたと述べています。
さらに今年、カナダの大学院への進学を決めたものの、パスポートを取り戻すために、警官と共に中国大陸へ行き、「愛国教育」を受けさせられたといいます。この「愛国教育」で周氏は、1970年代後半からの改革開放以降の中国の功績を紹介する展示会や、テクノロジー企業の本社に案内され、ポーズをとって写真を撮影するよう要求されました。「もし私が沈黙し続けたら、これらの写真はいつの日か、私の『愛国心』の証拠になっていたかもしれない」と、周氏は懸念を示しています(12月4日付BBC)。
周氏は、12月中に香港に戻って当局へ報告する義務がありましたが、戻った場合に再度出国を禁止されるリスクや自身の健康状態などを考え、留学先のカナダにとどまり、香港に戻らないことを選択。今回のSNSへの投稿に至ったとのことです。
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