2024年1月号記事

ニッポンの新常識

軍事学入門 42

安保三文書を評価する(前編)

またしても根本問題を棚上げ

世界の流れを正しく理解するための、「教養としての軍事学」をお届けする。

矢野一樹

元海上自衛隊・潜水艦隊司令官

矢野 一樹

(やの・かずき)1955年生まれ。防衛大学校第22期生、米国防大学修士(国家資源管理)。大湊地方総監部幕僚長、海上幕僚監部装備部長などを歴任。元海将。三菱重工顧問を経て、現在は防人と歩む会理事長を務める。

2022年12月に岸田政権は、13年に策定された「国家安全保障戦略」を廃止し、新たに「国家安全保障戦略」「国家防衛戦略」「防衛力整備計画」(安保三文書)を改訂しました(*)。世界情勢が激変し、我が国の安全保障環境が近年、劇的に悪化したことは万人が認めるところでしょう。

戦後、最も厳しい状況下で、新しい戦略の策定に9年もかかったこと自体が、日本の政治がいかに国防意識を欠いているかを物語っており、決して手放しで評価することはできません。

(*)「国家安全保障戦略」とは、国の外交・防衛政策の基本方針にあたる国家の最重要戦略。これを受け、防衛の目標を設定し、それを実現するためのアプローチや手段を示したのが「国家防衛戦略」。それを具体化した形として、防衛力の水準を示し、中長期的に整備すべき計画を示したのが「防衛力整備計画」。

ここに掲載した矢野氏の見解は、国防知識を普及するためであり、宗教団体とは関係がありません。