《ニュース》

ウクライナのザルジニー軍総司令官がこのほど、英誌「ザ・エコノミスト」に寄稿し、反攻作戦の期待を裏切ったことを認め、「消耗戦の間にロシアに軍事力増強の猶予を与えてしまう」と危機感を露わにしています。

《詳細》

ザルジニー氏は、現在の戦況は戦車などの機動力に重点を置く「機動戦」から、戦線が膠着し局面を打開できない「陣地戦」に入っているとし、それにより、ロシアに軍事力を増強させる猶予を与えてしまうと警告しました。その結果、ウクライナを徐々に脅かすことになるだろうと述べています。

そこで、ミサイルや砲弾などの基本的な装備は不可欠としたうえで、この戦況を打開するためのカギとなるいくつかの軍事装備や技術が必要だと提案し、同盟国に支援を呼びかけています。そのうち、最も重要なものが空軍だといいます。

これまでウクライナ軍は550を超える防空システムを破壊するなど、ロシアに対して莫大な損害をもたらしてきたとする一方で、依然としてロシアが有利であるとしています。ウクライナ軍は開戦時に120機の戦闘機を持っていましたが、その3分の1しか使用できていないといいます。そこで、ドローンが効力を発揮するだろうとも述べています。

それ以外にも、電子戦や対砲兵射撃、地雷処理技術の重要性を指摘したほか、最後に「予備戦力」についても言及しています。ウクライナでは自国内での訓練能力も限られており、前線の兵士の交代を容易には行えていないといいます。また、法律の欠陥として、国民が自らの兵役義務を回避することが可能となっていることについて懸念を示しました(これは大学に入ることで徴兵が免除されることを念頭に置いているだろうが、現実に、賄賂によって富裕層は兵役を免れ、それができない一般国民が路上で軍に強引に連れていかれるケースが多発している)。

そこで、「統一徴兵制度」を導入し、訓練・動員できる国民の範囲を広げようとしているといいます(現時点でも手足を失った障害者が戦場に駆り出されるケースが散見され、HIV患者や精神障害者も動員される懸念が高まっており、さらに65才の老人も動員する法案が議論されている)。また、「戦闘インターンシップ」の導入によって、新しく動員され訓練された人々を前線に派遣して、実地訓練を行うこと(事実上まともな訓練もせず、いきなり前線に送り込むということか)も可能になると述べています。

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