《ニュース》

米誌タイムが、ウクライナのゼレンスキー政権の苦悩ぶりを詳細に伝えています(10月31日付電子版)。ゼレンスキー大統領の頑固さがウクライナの選択肢を狭めているほか、大統領の側近が9月に行った訪米の中止を進言したり、軍の人員不足が深刻化したりしていると、主要メディアがこれまで伝えてきた実情と真逆の内容を報じています。

《詳細》

ゼレンスキー氏が9月下旬に米ワシントンの国立公文書館で行った演説は、米世論を刺激し、ロシアに勝利するためのウクライナ支援をより多く引き出すために計画されました。しかし、"英雄的な歓迎"を受けたとされる昨年末の訪米とは全く異なり、米議会での演説が共和党の抵抗によって拒否され、米保守派が多く視聴するフォックスニュースへの出演も叶わないなど、ゼレンスキー氏の側近が外遊の効果を疑問視して中止を進言する中、訪米を強行しました。

タイムは、「国立公文書館で演説した時、ゼレンスキー大統領はよそよそしく動揺していた」とした上で、彼は演説後の勲章を授与する式典中に早く進行するよう主催者に催促するほどだったと指摘します。演説自体も1時間以上遅れて始まり、その理由はホワイトハウスと国防総省との会合が長引いたためでした。恐らく、政権からの反応が色よいものではなかったのでしょう。

戦争開始から2年目を迎える中、ゼレンスキー氏は楽観主義やユーモアのセンスに満ちていますが、政権関係者は「彼は最新の報告を受け取って命令を下すと、部屋から出ていくだけになった」と述べ、戦争に勝つための手段を与えず、ただ生き延びる手段のみ提示する西側諸国に裏切られたと感じているといいます。

とはいえ、ゼレンスキー氏の信念は今のところ揺らいでおりません。ロシアに最終的に勝利すると信じているものの、その姿勢は大統領顧問を困惑させているようです。ある顧問は「ゼレンスキー大統領は自分自身を欺いている。我々には打つ手がない。戦争にも勝っていない」と苛立ちながら語り、別の側近はロシアとの和平交渉をタブー視する同氏の頑固さが、新しい戦略やメッセージを発信する政権の努力に水を差していると語っています。

さらに、ウクライナ大統領府から直接命令が下されても、前線の指揮官がそれに従わない現象が起き始めているほか、同じく大統領府が10月にロシアが制圧する東部ゴルロフカ市を奪還する作戦を軍に要求して拒否されたこと、軍の一部部門は武器・弾薬不足より人員不足の方が深刻であることなども伝えられています。

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