2023年12月号記事
ニッポンの新常識
軍事学入門 41
ロシアと北朝鮮の関係強化をなめたらいけない
世界の流れを正しく理解するための、「教養としての軍事学」をお届けする。
元陸上自衛隊 小平学校副校長
矢野 義昭
(やの・よしあき)1950年、大阪府生まれ。京都大学卒業後、一般幹部候補生として陸上自衛隊に入隊し、第1師団副師団長兼練馬駐屯地司令などを歴任。元陸将補。現在、(財)日本安全保障フォーラム会長、防衛法学会理事を務める。著書に『核拡散時代に日本が生き延びる道』(勉誠出版)など多数。
ロシアのプーチン大統領は9月に開催した東方経済フォーラムで、「極東開発」を重視する意向を示しました。これはウクライナ戦争後をにらんだ世界戦略の一環であり、北朝鮮との関係強化にそれが現れています。
その狙いは2つあります。1つは、西側諸国がウクライナを代理戦争に利用してロシアを追い込んだことを受け、ロシアは逆に北朝鮮を代理戦争に利用し、アメリカの動きを極東で拘束することです。もう1つは、ロシア極東の影響圏を侵食する中国に対し、北朝鮮を使ってけん制することです。北朝鮮としても、中国のみに依存することは強いリスクを感じており、ロシアとの関係を強化してバランスさせるという利害で一致しました。
そこで北朝鮮がロシアに大量の砲弾などを供与する見返りに、核戦力を強化する関連技術が提供されることで合意しました。