2023年8月号記事

デジタル円は怖いぞ!

あなたの私生活がまる見えに

お札の代わりに、スマートフォンに入れた"国のアプリ"で買い物や貯金をする──。
そんな制度を、各国政府がつくろうとしている。
あなたの資産や買い物記録が事細かに把握され、課税、監視、行動のコントロールに使われる未来に、警鐘を鳴らした。


contents


デジタル円は資産課税への道を開く

マイナンバーとの"紐づけ"案も

デジタル通貨がとりわけ課税当局にとって、「垂涎の的」(*1)であることは知られている。誰がどこで取引をし、いくら持っているのかを把握すれば、税金の"取りっぱぐれ"が減り、ゆくゆくは資産に直接課税するインフラとなる。

著名なキャッシュレス推進論者であるハーバード大学のケネス・ロゴフ教授は著書で「先進国を見渡すと、レスキャッシュ(現金が少ない)社会に移行した時のメリットが日本以上に大きい国はない」と訴えるが、その理由に、巨額の公的債務が存在し、増税の"必要性"があることを挙げている点は見逃せない(*2)。

(*1)何としても手に入れたいと熱望するもののこと。
(*2)同氏著『現金の呪い』(日経BP社)


財務省の研究会「デジタル通貨で課税強化を」

この旨みに、当然、わが国の財務当局が無関心であるはずはない。

財務省が2018年に立ち上げたデジタル通貨に関する研究会の報告書に、次のような不気味な文言がある。平たく言えば、「デジタル円なら国民の取引情報を直接集められ、課税を強化できる」という提言である。

「民間の事業体をプラットフォームとする電子マネーの取引情報を公的部門が収集して課税目的等に利用することも、一定の範囲で可能かもしれないが、(国家が発行する)電子通貨については、(中略)その取引情報に対して公的部門が直接アクセスすることが可能であろう」(*3)

さらに同報告書では、「特に、電子通貨にID(国民識別番号)を付した場合には、より詳細な情報が入手できるかもしれない」「マイナンバーカードを電子マネーとしても使えるようにし、そこに給付金を支給したり、取引情報を当局が把握し、社会保障政策に役立てたりする」との趣旨の記述もある。デジタル通貨とマイナンバーを紐づけるという、恐ろしい提言だ。こうした構想は実際、世界でも議論されている。財務省も「あわよくば、デジタル円とマイナンバーを紐づけて、なお課税を容易に……」などと考えていることは、国民として想定しておくべきだろう。

(*3)財務省財務総合政策研究所「デジタル時代のイノベーションに関する研究会」報告書。財務省出身の大学教授に語らせている。

 

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