1989年に天安門事件が起きてから34年目となった6月4日、東京都内で「六・四天安門事件34周年抗議集会 天安門虐殺を忘れるな!!」(主催:天安門事件34周年抗議集会実行委員会)が開催された。

天安門事件とは、中国・北京の天安門広場に集まり、民主化を求めて活動していた学生たちに対し、中国人民解放軍が戦車や兵士を送り込んで鎮圧し、多数の死傷者を出した事件のことだ。

主催団体は同日午前中、炎天下の中、中国大使館近くで中国政府に対する抗議活動を行った。そして午後に、抗議集会が開催された。集会では、元天安門学生指導者で現在はアメリカ在住の周鋒鎖氏が約1時間、講演を行った。

周氏は、1989年当時、清華大学で1度だけ行われた学生会の直接選挙を手掛け、抗議のデモと集会を組織する学生リーダーだった。6月4日に中国軍が学生らを武力弾圧した後、周氏は指名手配された21人のうち5番目に名前が載り、獄中生活を1年間送った。その後1995年に渡米し、2005年に人権擁護団体「人道中国」を創立。中国の民主化、自由化、法制化の推進や中国の良心犯への支援などに力を入れている。

中国民主化を願った若者たちの思いを受け継ぐ

周氏は講演の冒頭、「来日は長年の願いだった」と語った。日本は地理的に中国と近く、中国からの移民が欧米の次に多いこと、文化認識の面でも中国と近いことなどをその理由に挙げた。

34年前に学生運動を率いて指名手配犯となったが、使命を果たすことに責任を感じており、またそうした人生であることを誇りに思っているのだという。

天安門事件については、「1989年6月4日、中国共産党は大虐殺を行なったが、これは決してあってはならないことだ。北京(政府)が起こした大量殺戮には、とても辛い思いをした」と語った。都市部に直進した中国軍の戦車は、9歳の子供もひき殺したという。

中国軍によって武力鎮圧される前、100万人もの人々が街に出て平和的に抗議した運動は、全国400余りの都市や地域で50数日続いたと振り返り、「これが、私が民主主義のために闘い続ける原動力になっている」と語った。

そして、6月2日に米ニューヨークに天安門事件の歴史を伝える「六四記念館」が開館したことについて言及。2年前に香港の「六四記念館」が閉鎖に追い込まれたため、約7000万円の寄付を集めて、ニューヨークでの開館にこぎつけた。周氏は同館に展示する資料や物品の管理に関わっているといい、講演内でその一部の資料を紹介した。

周氏はチラシ(写真1)を手にして、「4月24日に印刷されたこの北京大学のチラシは、中国における独立民主組織の存在を示している」と指摘。Tシャツ(写真2)も掲げ、中国に自由の女神像を建てるための募金集めの一環として学生がつくったものだとし、「これは中国に普遍的価値があることを表わしていた」と説明した。

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(写真1)

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(写真2)

最後は、殺戮そのものを示すものとして、タオル(写真3)を広げた。6月4日の明け方、天安門広場を去ろうとした若者が中国軍による武力行使で負傷し、傷口を守るために用いたもので、血のシミができている。

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(写真3)

「六四記念館」は、誰も否定できない歴史の真相を語り継ぎ、未来に対する希望を託すための場所だという。周氏は「希望の下で、民主・自由・正義を大切にしたいという中国人の意志は死なない」と強く訴えた。

海外からの情報発信が中国民主運動のカギに

そして、昨年11月下旬に中国で行われた大規模な抗議活動「白紙革命」について、「非常に大事な意味を持つ」と述べ、この活動には海外とインターネットを介した情報の共有があったと指摘した。

中国国内では、VPN(仮想プライベートネットワーク)を使わなければ、海外の情報を得られない。しかし、多くの人が、昨年10月北京市内に習近平国家主席を批判する横断幕が掲げられた事件(関連記事: https://the-liberty.com/article/19960/)のことを海外からの発信で知り、瞬く間に中国国内に広まったという。この事件は白紙革命の引き金にもなった。

こうしたことは、海外の中国人コミュニティが中国国内の活動に協力できることを示しているため、「海外の組織を育てなければならない」と周氏は考えている。

最後に周氏は、「天安門事件から34年が経った。この先まだ続くだろうが、必ず民主化は実現しなければならない。中国共産党は世界にとっても災難をもたらす存在であるからだ」と、中国における民主化の必要性を力強く訴えた。

講演の後、チベット代表としてダライ・ラマ法王日本代表部事務所代表のアリヤ氏、ウイグル代表として日本ウイグル協会理事のサウト・モハメド氏、中国における臓器移植を考える会(SMGネットワーク)の廣田寛光氏らが登壇し、自国の状況などについて訴えた。

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抗議集会後に行われた記者会見の様子。

中国の民主化なくして、世界に平和が訪れることはあり得ない。周氏によると、中国の失業率は25%に上っていることから、水面下で中国国民の不満は溜まっていて、いつ爆発してもおかしくない。私たちは、中国国民、そして民主化に対する関心を持ち続ける必要があり、その支援も惜しんではならない。

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