《本記事のポイント》

  • 新世界秩序づくりに乗り出した中国
  • プーチン大統領はなぜイランの抱き込みに成功したのか
  • アメリカの民主主義は理想的なのか

ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカの新興5カ国(BRICS)の外相会議が6月1日から南アフリカのケープタウンで開催された。

このBRICSへの加盟希望国が増えている。イランやサウジアラビアなどもBRICSへの加盟を申請中で、今回の会議は、8月22日から南アフリカで開催されるBRICS首脳会議に向け、加盟拡大等について検討するものとなった。

加盟拡大は、昨年の首脳会議のホスト国だった中国が提案したものである。今回拡大について決着は見なかったものの、主要先進7カ国(G7)の新興国版目されるBRICSが存在感を増しているのは事実だ。

今回の会議でインドのジャイシャンカル外相が「あまりにも多くの国が少数の国の言いなりになっている」と訴えた。また本会合では、国連安保理を含めた世界の意思決定の在り方を改革する必要性なども話し合われている。

G7が世界人口の10%を占めるのに対して、BRICSは世界人口の40%を占める。G7の総計GDPも世界の半分に満たない。実態に近いGDPの国際比較に用いられる購買力平価GDPベスト10には、中国、インド、ロシア、ブラジルがランクインしており、G7を中心に世界が「展開」しているとはもはや言えない状況になりつつある。

しかも、その主役は中国である。冷戦時代のように世界は二極化しつつあるということだ。

新世界秩序づくりに乗り出した中国

この二極化において、中国が「成果」を上げ始めた地域。それが中東である。水面下で進んできた外交努力が、サウジとイランの国交回復という形で3月に実を結んだ。

だが中国との歩み寄りは、イランの建国の父、ホメイニ師が生きていたら許さなかったかもしれない。1979年のイラン=イスラム革命で、シーア派イスラム主義のイランが建国された当時、ホメイニ師は、中国の無神論的で唯物論的な実態を見抜き、「帝国主義者」であるとして、中国を警戒していた。

しかしこの革命は、イランの孤立をもたらした。一方、2015年にオバマ政権下で行われた核開発を一定期間制限する代わりに、経済制裁を緩めるとしたイラン核合意は、制裁の緩和を意味したが、2018年にトランプ前大統領が離脱。経済制裁が強まった結果、外貨不足に陥り国民は物価高にあえいで、2019年秋にもイラン全土でデモが発生した。

イラク、リビア、シリア、アフガニスタンの政権崩壊を目の当たりにしてきたイランは、「次はイランの番だ」という恐れを抱いてきた。その恐れが目前に迫ったのが、2019年と、2022年9月からイラン全土で発生したデモであった。

イランは体制転換を防ぐには、「西側でも東側でもなく純粋なイスラム国家を建設する」という国是を捨ててでも中国とのパイプを強化する必要があると考えたのである。

現在、中国はイラン産の石油を購入する最大顧客、つまり「お得意さま」となっている。制裁に苦しんできたイラン経済、ひいてはライシ現政権を浮上させる力となっている。年始にはデモによる政権転覆の可能性もささやかれていたが、その状況が一変したのである。

プーチン大統領はなぜイランの抱き込みに成功したのか

またイランは、ロシアに無人機を提供したり、無人航空機を生産するための工場をロシアに建設したりする予定である。非イスラム教徒の多い国への協力も、1979年のイスラム革命以来のことである。

ロシアとイランとの関係は、ロシアが戦争で窮地に立たされたから強化されたわけではない。2015年に10年ぶりにハメネイ師がモスクワを訪問して以来、積極的に交流がつみ重ねられてきたことによるものだ。

両国が円滑にきずなを深めることができたのは、プーチン大統領に宗教性があり、イスラム教にも寛容であるのと、保守的な価値観を持っていたからだとされている。

また、サウジとアメリカとの関係もバイデン政権下で悪化した。もともと共和党政権下ではサウジとの関係は良好で、民主党政権時代においては隙間風が吹くことが多かった。だが、バイデン大統領が「民主主義 対 専制主義」の外交アプローチを主軸に据えたことがきっかけで、バイデン政権下で、両国の関係にはこれまでにない亀裂が入った格好になった。

アメリカの民主主義は理想的なのか

もとよりアメリカの民主主義が世界の模範たるものなのかと言われると、そうとは言えないというのが結論だろう。

本誌3月号「米民主党政治の闇 神を追放した民主主義の末路」でも紹介した通り、米民主党は、保守系の言論の自由を封殺。選挙前に民主党に不利な情報を国民に知らせないなど、決して民主主義的とは言えない戦術をとっている。

また米民主党は「エクイティ」という結果平等を実現する言葉に、至上の価値を持たせている。これは、フランス革命型の民主主義を彷彿とさせるもので、アメリカの民主主義の行方が懸念されるところだ。

こうした中で、「民主主義陣営」が素晴らしいと自賛することは、かえって自らの傲慢さを露呈する。

本来、自由とは宗教的責任と表裏一体の概念であった。自由とは条件付きで与えられるものなので、神への愛や、社会への責任・義務を取り去った時に、単なる放縦になってしまう。

バイデン大統領は国民を神に近づけるという政治家の役割を見失い、集票のために政府に国民を依存させる政策をとっているが、その結果、自由よりも放縦が広がり、米民主主義は衰退の一途をたどっている。

そうした「自由」が広がることへの警戒心が、BRICS諸国の中に共有されているのは確かである。

大川隆法・幸福の科学総裁は、2022年1月9日の「メシアの法」講義で、完全な無神論・唯物論国家は中国と北朝鮮ぐらいしかないため、「『神仏への信仰心を持っている国家 対 無神論・唯物論国家』という、この対立であれば勝てる可能性はある。(中略)そちらのほうに追い込んでいく必要はある」と述べていた。

BRICS諸国は、反西洋という形で、結束しつつあり、世界が二分化する時代に突入している。

中国の台頭は許すべきではないのはもちろんである。だが西側も、真理への帰依、つまり信仰なくして、世界秩序は形成できないことを自覚すべきだろう。

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2023年7月号 今、中東で何が起きているのか ──バイデン政権下で進む世界の二分化

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2023年3月号 米民主党政治の闇 神を追放した民主主義の末路

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