2023年1月号記事

電力不足・災害誘発・自然破壊

4700基の風力発電が北東北を踏みにじる!

風力発電の実態は、「グリーン」なイメージとは程遠い。
大量導入すれば美しい自然を破壊し、さらには停電に怯える日々がやってくる。

青森・岩手・秋田の北東北3県において、合計約4000基の風力発電施設が建設予定であることが、編集部の調べで分かった(下地図)。既存のものと合わせると、数年内に4700基規模が立ち並ぶイメージとなる。県別に見ると、青森県に約2300基、岩手県に約1100基、秋田県に約1500基。これは域内のコンビニ軒数の3倍を超える。

風車1基が"40階高層ビル"

上の写真を見ても分かるが、風力発電施設(以下、風車)は、それぞれが一つの巨大建造物だ。

3県における現時点の最高層ビルが、青森県で76メートル(青森市・アスパム 15階)、岩手県で92メートル(盛岡市・マリオス 20階)、秋田県で95メートル(秋田市・ベルドゥムールランドマーク秋田 30階)(下図)。

一方で風車は大きいもので200メートル(40階建て高層ビルに匹敵)ほどもあり、単体でも域内で群を抜く"巨塔"だ。

これがあと数年で、北東北中にひしめくことになる。

政府は「脱炭素」の切り札として、風力発電の大量導入を目指す。しかし日本国内でその適地は限られる。条件としては、一つには安定して強い風が吹くこと。二つ目には、電力大消費地の首都圏から遠くないことが望ましい。北東北は両者を満たす。そのため開発事業が集中する。事実上、日本の風力政策を一手に受け止める形になっている。

環境省HP「環境アセスメント事例情報」に掲載された事業情報を元に編集部作成(「報告書」段階の事業や廃止事業は除くが、更新事業は含む)。

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青森県知事も声を荒げて激怒

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〈上〉会見を行う三村・青森県知事。
〈下〉ブナ原生林が広がる八甲田山。
写真提供:PIXTA

しかしこれだけの巨大建造物を無数に造れば、周辺環境に多大なダメージを与える。現地からはすでに"悲鳴"が上がり始めている。

「再生可能エネルギーなら何をやってもいいのか!」

青森県の三村申吾知事は8月の定例会見で声を荒げた。問題となっているのは、青森市など6市町で計画されている「(仮称)みちのく風力発電事業」。東京ドーム3700個分という広大な区域に最大150基の風車を建てる、国内最大級の事業だ。これが、世界遺産・白神山地と並ぶ八甲田山系のブナ林を伐採する形で造られる計画となっている。地元住民が激怒して反対運動を起こすなど、大反発を生んでおり、県も事業内容見直しを求めている。

同事業の問題点について、日本自然保護協会の若松伸彦博士(環境学)は編集部の取材にこう語る。

「特に事業想定区域の南側には、樹齢200~300年のブナの木が点々と残っています。ここを伐採すると、原状回復までに数百年かかります。現在からさかのぼれば江戸時代や戦国時代になるほど長い時間です。こうした場所に手を付けるのは、非常にまずいです」

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青森県東通村ですでに稼働している風力発電施設。現在、各地で建設予定のものは、大半がこの2倍近くの大きさとなる。写真:Haruyoshi Yamaguchi/アフロ

 

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