2022年12月号記事

習近平の台湾侵攻

中露北vs.日米台という悪夢

ロシア―ウクライナ戦争をめぐり、日本が選択した道は、「台湾とともに日本が滅びに向かうシナリオ」かもしれない。

中国の習近平総書記(国家主席)が2期10年ごとに交代する慣例を破り、異例の3期目に突入した。習氏が「中国共産党の歴史的な任務」と位置付けているのが"台湾統一"である。世界一流の軍隊をつくり、国家主権を断固として守り抜く──。この一丁目一番地の国家事業が台湾統一であり、習氏が在任中に是が非でも達成したい課題と目されている。

2024年までに台湾を侵攻?

その意志を露骨に示したのが、アメリカのペロシ下院議長が8月に訪台したことへの"返礼"だ。米高官の訪問に反発した中国軍は、台湾を突如として取り囲み、実弾演習を強行した。台湾を海上封鎖できる意志を見せ、日本の排他的経済水域にもミサイル5発を発射して「台湾に手を出すな!」と恫喝。後述するインタビューでは、「台湾侵攻が、米大統領選がある2024年までに起きる」という見通しが出て来ている(本誌38ページ)。

中国が近い将来に台湾を侵攻すれば、日本が戦闘地域になるのはほぼ確実で、専門家の間では尖閣諸島を含む沖縄県も同時に攻撃されると強く懸念されている。現在、日米台の3カ国がどのように連携して防衛できるかが議論され、中国軍を想定したシミュレーションが行われている。

敵は中国だけ? 現実逃避する政府

だがロシア―ウクライナ戦争により、これまで議論されてきた台湾・沖縄有事は通用しなくなりつつある。というのも、西側諸国がロシアを追い込み、ロシアと中国の一体化に向かわせた結果、最悪の場合、「ロシアが有事に介入して中国を支援する」という全く新しいシナリオが想定されるようになったためだ。

元陸上自衛隊西部方面総監の用田和仁氏は、「中国や北朝鮮と対峙している日本は今、中国と戦う戦力すら整っていません。そんな中でロシアも敵に回せば、歴史上最悪の戦略環境である中露北の三正面作戦を仕掛けることになります。『三正面作戦は起きない』と批判する人がいますが、それは想像力が足りないのか、あるいは現実逃避しているだけです」と憂慮する。

その兆候として、中国とロシア軍の艦艇が6月、青森県の津軽海峡を通過して日本列島を囲むように航行し、日本をけん制した。中露の動きは、「日米台が連携して中国に対処する」という既存の計画を根底から覆すような事態である。ところが日本は、「新しい脅威」についてピンと来ておらず、ロシアと敵対した先に何が起きるかを予期していない。

本誌は一貫して中国の脅威に警鐘を鳴らしてきたが、有事の前提が大元から変わりかねない"地殻変動"が予見されることを受けて、三正面作戦の脅威を具体化する。

 

次ページからのポイント

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