香港記者協会はこのほど、毎年発表している報道の自由をめぐるアンケート結果を発表した。

メディア関係者を対象にしたアンケートで、新聞やテレビなどの記者や編集幹部のうち97%が「香港の報道の自由がこの1年間で後退した」と回答したという(今年5月、737人を対象にした調査で169人が回答)。

メディア関係者が回答した「報道の自由指数」は、100点満点のうち16.2点。昨年より5.9点下がり、2013年の調査開始以来、最低となった。

香港記者協会は声明の中で、香港の報道環境は「この1年で劇的に悪化した」と言及。「ニュース産業が縮小した直接的な結果として、公共の利益になる情報が少なくなっており、アクセスできる情報は多様性があるというより、均質なものになっている」と指摘した。

同協会によると、「(当局が目をつけている)香港記者協会のアンケートに回答することで、当局から報復されるのが怖い」と語った記者も複数いたという。また、「自由で安全な環境」で活動できる報道機関は、国際金融センターとしての香港の地位を維持するために、「極めて重要」であるとも述べている。

民主派メディアが次々と閉鎖

2020年6月に香港国家安全維持法が施行されて以来、香港の報道の自由は大きく制限されている。

昨年6月には中国共産党に批判的な香港紙「蘋果日報(アップル・デイリー)」が廃刊に追い込まれた。また昨年12月には香港民主派ネットメディア「立場新聞(スタンド・ニュース)」、今年1月には「衆新聞(シチズン・ニュース)」が閉鎖されている。現在、アップル・デイリーとスタンド・ニュースの幹部と編集者は、編集室の家宅捜索後、香港国家安全維持法の下で起訴される恐れが高まっていると報じられている。

香港記者協会の陳朗昇主席も、警察に身分証を提示しなかったとして公務執行妨害罪で逮捕起訴され、22日に初公判が開かれたばかりだ。

「フェイクニュース」法の制定も検討中

香港記者協会が「報道の自由指数」を発表した前日、香港特別行政区トップの行政長官・李家超(ジョン・リー)氏が、中国の国慶節を祝うためのメディア関係者向けイベントで、記者たちに対し、"報道の自由を破壊する"フェイクメディアや悪い要素から距離を置き、「正しい香港のメッセージ」を世界に発信するようにと演説していた。

このイベントは招待制で、香港記者協会は参加を拒否された。イベント翌日に同協会がアンケート結果を発表したのは、"せめてもの抵抗"だったのだろう。

香港非営利ニュースwebサイト「香港フリープレス」によると、当局はフェイクニュースに対抗するために「フェイクニュース」法の制定を検討しているという。そのような法律が制定されれば、報道機関への取り締まりはさらに厳しくなり、報道の自由をさらに抑圧するための"新たな武器"となることだろう。

香港の状況は決して対岸の火事ではない。万が一、台湾侵略の行きつく先として、日本が中国の支配下に置かれることになれば、同じ運命が待っている。

香港の民主派の人々は当局に鎮圧され、一見敗北したように見えるが、決して「香港の自由」を守ることを諦めたわけではない。日本、そして世界は、自由と繁栄を守ってきた香港の人々を見捨ててはならない。香港の自由を中国本土に広げていくために、何ができるかを真剣に考えるべきだろう。

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