《ニュース》

ウクライナでの戦争が長引く中、世界が核戦争に突入する危険性を指摘する声が上がっています。

イギリスの国家安全保障担当首相補佐官を務めるスティーブン・ラブグローブ氏(Sir Stephen Lovegrove)は27日、米シンクタンク・戦略国際問題研究所(CSIS)で講演を行い、核紛争のリスクが高まっていると警鐘を鳴らしました。

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ラブグローブ氏は、かつての冷戦時であっても、ソ連と西側陣営の間では交渉や会話が継続されており、互いの核使用に関するドクトリン(原理原則)や核能力について理解を深めることができていたと指摘。これらの理解が、両陣営が計算を誤って核戦争に突入する事態を避ける上で、重要な役割を果たしたと述べました。

しかし、かつてなされていた「(核)ドクトリンの共通理解」が今日においては欠如しているとし、次のように語っています。

「科学技術の急速な進歩を含む科学とテクノロジーの発展、ハイブリッド戦への移行、そして宇宙やサイバーといった新たな領域への競争の拡大といったものにより、今日、我々はより広範囲における戦略的リスク(strategic risk)とエスカレーションに通じる道(pathways to escalation)に直面しています」

こうした前提を共有した上で、ラブグローブ氏は米中首脳による電話会談を支持し、「制御不能な紛争」への突入を防ぐため、対話の重要性を強調しました。

本欄でも報じたように、米ニューヨーク市の緊急管理局は11日、核攻撃を受けた場合に住民が取るべき行動をまとめた動画を公開。ベラルーシのルカシェンコ大統領も21日、「核戦争の奈落」に陥るのを防ぐには、ウクライナでの終戦に合意する必要があると語るなど、着地点の見えないウクライナでの戦争に、核戦争を懸念する声が高まっています。

本誌9月号特集「国民を死滅に追いやるゼレンスキー大統領」に登場する、元米陸軍中佐のダニエル・デイビス氏は、米バイデン政権に対して、「核保有国と衝突するリスクを理解しているようには見えない」とした上で、ロシアの内在ロジックを次のように指摘しています。

「(NATO対ロシアの戦いに発展すれば)ロシアが戦術核で応戦する可能性は、考えられるだけでなく、大いにあり得ます。なぜなら、ロシア側は『1対30カ国』の戦いと認識せざるを得ないだろうからです。30カ国と敵対するので、核兵器を使わずして太刀打ちできません」(参照記事: 国民を死滅に追いやるゼレンスキー大統領 「ザ・リバティ」9月号(7月29日発売) )

ラブグローブ氏もデイビス氏も、リーダーが「落としどころ」を想定しないまま、判断を誤って戦争をエスカレートさせた場合、甚大な被害を生む核戦争にまで突入しかねないという重要な論点を指摘していると言えます。

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