2022年9月号記事

国民を死滅に追いやるゼレンスキー大統領

ウクライナ軍の劣勢が報じられても、「屈してはならない」という見方が根強くある。
しかし、現実を直視すべき時が来た。


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国民を死滅に追いやるゼレンスキー大統領 - Part 2 西側が支援するほどウクライナは領土を失う


アメリカ

INTERVIEW

西側が支援するほどウクライナは領土を失う

イラク、アフガニスタン戦争に従軍した経験から、政府の情報とマスコミ報道が戦場の現実から乖離する実態をよく知る元米陸軍中佐に、ウクライナ戦争を分析してもらった。

元米陸軍中佐

ダニエル・デイビス

ダニエル・デイビス
20年以上の従軍経験を有する軍事専門家。現在はシンクタンク「ディフェンス・プライオリティ」のシニアフェロー。

──あなたは数々の米メディアに出演し、「露軍の勝利は確実」と分析されています。

デイビス氏(以下、デ): 私は20年以上の軍歴があり、イラクやアフガンなどにも従軍しました。現代の戦場を直接経験しており、ウクライナで何が起きているのかよく分かるのです。そして残念ながら、実際には敗北に向かっているにもかかわらず、指導者が「戦争に勝っている」と誤解を招くような情報を国民や議会に伝えることも知っています(*1)。

多くの人が、「ウクライナは勝つ。彼らが戦い続けられるようもっと武器を送るべきだ」と主張していますが、状況を見る限り非現実的です。というのも、戦争で起きる多くのことは基本(原則)や(兵器などの)実用面、バランス・オブ・パワー、戦力比較に基づいています。戦争は数学のようなもので、それらを比較して計算すれば、ロシアが圧倒的優位であり、ウクライナが戦い続け最終的に勝利するなどというのは不可能であると分かります。

(*1)デイビス氏はアフガンにおける戦況の実態とワシントンに伝えられる情報の乖離を明らかにし、全米で有名になった。


ウ軍は絶望的戦うほどに死人が増える

ロシアは航空戦力、火砲、工業力、兵站、燃料の確保・製造など、あらゆる面で優位に立っています。一方ウクライナ側は、これらのほとんどを有していません。語れるほどの空軍力はなく、ほんの数回の出撃があるのみ。ウクライナの防空力はすでに低下しており、一日最大300回出撃するロシア空軍の部隊を止められず、戦闘機を撃ち落とすなどほぼ不可能です。ウクライナの工業力も大部分が、同国が所有すらしていないロシアのミサイルや他の精密誘導兵器によって破壊されています。(ウクライナに)感情移入していない人なら誰でも、「ウクライナが勝てる方法はない」と理性的に言うでしょう。戦い続ければ死人が増え、失う領土が増えるだけです。

いつかは人々が目を向けると信じ、こうした事実を発信し続ける義務があると感じています。そうしなければ人々が(ウクライナに)持つ印象は、西側のメディア、特にアメリカとイギリスが報じる、8月には"100万人のウクライナ部隊"が攻勢をかけるなどといった楽観論だけになります。

──あなたは、「西側が支援するほど、ウクライナは徹底的な軍事的敗北を被る」と警鐘を鳴らしています。

: その通りです。ちょうど今日(米時間7月7日)、ゼレンスキー氏は改めて、ロシアとの停戦交渉のためにいかなる領土割譲もしないと表明しました。一方でプーチン氏は「交渉開始が遅くなるほど、(ウクライナにとって)悪い結果となるだろう」「ロシアに勝てると言う人々が多数いる。やらせてみよう」と語っています。プーチン氏は実際の戦果を知っており、ウクライナ軍に勝てると分かっています。戦争を続けるほど、より広い領土が手に入ると分かっている状況で、手を緩めるわけがありません。

現時点で、ウクライナはまだ北東部のハリコフ、南部のオデッサ、ドネツク州の大部分を保有しており、少なくとも黒海沿岸へのアクセスがいくつか残されています(下地図)。しかし、長くはもちません。もしウクライナが戦い続ければ、秋までにこれら3地域(ハリコフ、オデッサ、ドネツク州の残された土地)の1つもしくは全てを失う可能性が非常に高いと言えます。

今日が10月1日だと仮定しましょう。ハリコフ、オデッサ、ドネツクを全て失い、ドニエプル川まで(南部流域)の領土をほぼ喪失。黒海もアゾフ海の沿岸も全てを失ったとします。そこから7月7日時点に戻れたなら、(ゼレンスキー氏は)「すぐ取引をして、これら全ての領土を保持しておこう」と言うはずです。

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