《本記事のポイント》
- アメリカはアジアでの紛争同時多発に準備なし
- 中国が支援すれば北朝鮮の韓国侵攻リスクは高まる
- 日本への攻撃も想定済みの北朝鮮
河田 成治
(かわだ・せいじ)1967年、岐阜県生まれ。防衛大学校を卒業後、航空自衛隊にパイロットとして従事。現在は、ハッピー・サイエンス・ユニバーシティ(HSU)の未来創造学部で、安全保障や国際政治学を教えている。
北朝鮮はこれまでの大陸弾道弾ミサイル(ICBM)に加えて4月16日に、短距離ミサイル2発を発射しました。朝鮮中央通信は、発射に金正恩総書記が立ち会ったとし、「新型戦術誘導兵器」の発射実験に成功し、「これは戦術核運用の効率と火力の多角化を強化するのに大きな意義を持つ」と伝えました。
「戦術核」とは、北朝鮮が韓国に侵攻するなどして武力衝突が起きた際、攻撃の手段として実際に使うことを想定した核兵器です。
つまりICBMが、アメリカから北朝鮮が攻撃されることを「抑止」する目的で開発されていることとは違って、戦術核は「先制攻撃」のために使われる核となり得るものなのです。
今年1月に開催された党大会で金正恩氏は、この「戦術核」の開発を表明しました。また4月25日の北朝鮮軍創建90年記念の軍事パレードで金氏は、「核の基本的な役割は抑止だが、他国が望ましくない状況をもたらした場合、それだけには限られない」と実際に核攻撃の可能性をちらつかせました。これを単なるブラフと見なすことは危険です。
アメリカの北朝鮮を専門にウォッチする米シンクタンク「38 North」は、北朝鮮の豊渓里(プンゲリ)の核実験場で核実験の兆候が見られると分析しています。
アメリカはアジアでの紛争同時多発に準備なし
アメリカのウクライナ支援をやめさせるには、アジア地域での紛争は好都合と映ります
また中国にとっては、台湾を奪取する好機です。
ロシアがウクライナへの軍事作戦に手間取っていることから、「中国にとっての台湾侵攻のハードルも高まった」「中国は台湾侵攻に当面は躊躇するはずだ」と分析する専門家も多くいます。しかし、それはあくまで中国が単独で動く場合ではないでしょうか。
またミリー米統合参謀本部議長は議会の公聴会で、「ウクライナのようにアメリカが効果的に支援をすることで台湾も防衛できる」と述べると同時に、「台湾防衛は現地に任せる」と証言しました。
「アメリカが直接に台湾防衛に乗り出さない」という発言はかなり衝撃的です。アメリカの介入がなければ韓国も台湾も、尖閣も北海道も、極めて大きな侵略の危機にさらされることになるでしょう。
仮に間接的な支援にとどまったとしても、世界各地で動乱が同時に起きた時の迅速で効果的な、一致団結した行動が取れるのか、この発言から疑問が生じてきます。
中国が、北朝鮮を利用して韓国を攻めさせ、アメリカの対応を大混乱に陥らせる。そんなシナリオは、全世界の眼がウクライナに集中する今、西側諸国にとって最悪のシナリオとなるでしょう。
中国が支援すれば北朝鮮の韓国侵攻リスクは高まる
北朝鮮が韓国に攻め込むというシナリオは、今まで軍事的にはナンセンスでした。北朝鮮は飛び道具のミサイルは多数保有するものの、まともな空軍も陸上部隊も持たず、戦争を継続する兵站(燃料や物資補給などの後方支援)が大いに不足しているからです。
しかしそれらは、西側がウクライナを強力に支援したごとく、中国から武器や兵站面での莫大な支援によって補うこともできます。ただし、それほどまでに中国が北朝鮮を利用するメリットが高まれば、ではありますが。
北朝鮮の最大貿易相手国は中国であり、北を生かすも殺すも中国の采配一つにかかっています。
昨年度は、新型コロナウィルスと、国際的な北朝鮮への制裁に加わった中国の圧力も加わって、北朝鮮は存亡の危機に瀕していました。
しかし今年1~2月の中朝の貿易額は、公式データでも昨年同期の41倍近くに急増しましたし、実際はもっと大きいと推定されています。この変化は、中国の北朝鮮への見方が大きく変わった面があることを示唆しています。
北朝鮮には、2010年の韓国・ヨンピョン島の砲撃事件や、韓国海軍の艦艇を魚雷攻撃で撃沈するという前科があります。
今回は中国とロシアがバックにあり、両国とも地域紛争が起きることは好都合であるため、北朝鮮がことを起こした場合、韓国との全面戦争まではならないとしても、単なる局地的な事件程度で終わるとは考えにくい面があります。
時期としては、尹錫悦(ユン・ソクヨル)氏が韓国の新大統領に就任する5月10日から6月にかけてが、一つの山場となるでしょう。
尹氏は元検察官で、政治家としてのキャリアはゼロです。就任後、軍の掌握さえ困難な同氏の足元を見て、北朝鮮が電撃戦を仕掛ける可能性は低くありません。
日本への攻撃も想定済みの北朝鮮
北が武力攻撃を発動した場合、在日米軍基地や司令部、政治中枢が同時攻撃されるリスクがあります。具体的には、横田、横須賀、市ヶ谷、首相官邸、沖縄の嘉手納(かでな)、普天間、キャンプコートニーなどです。
同時に、ロシアによる北海道への威嚇や武力攻撃、中国による尖閣奪取や台湾侵攻が起きたらどうするのでしょうか。
かつて米マスコミは「トランプ大統領はアメリカ国内と世界を分断した」と批判しました。しかし本当に世界を分断しているのは、バイデン大統領です。バイデン氏の「民主主義国家と専制国家の対決」という二分する方法が、かえって世界の分断を強めています。特にバイデン氏がウクライナ紛争を煽ったことで、陣営の二分化が劇的に加速しました。
日本政府はロシア敵視政策を一刻も早く転換すべきです。ロシアへの厳しい外交政策が、北朝鮮の暴発や、北海道や尖閣・台湾危機などと連動していることを大局的に観なくてはなりません。
HSU未来創造学部では、仏法真理と神の正義を柱としつつ、今回の世界情勢などの生きた専門知識を授業で学び、「国際政治のあるべき姿」への視点を養っています。詳しくはこちらをご覧ください(未来創造学部ホームページ)。
【関連書籍】
いずれも幸福の科学出版 大川隆法著
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