2月24日の「ロシアのウクライナ侵攻」以来、テレビと新聞の報道は一色に埋め尽くされた。そうしたなかで、大手メディアとは異なる視点から、ウクライナ危機の深層に迫るドキュメンタリー映画が注目されている。

「JFK」「プラトーン」などの作品で知られるオリバー・ストーン監督がエグゼクティブ・プロデューサーを務めた、『ウクライナ・オン・ファイヤー(Ukraine on Fire)』(2016年)だ。このたび、マスコミが報道しない「事実」を世界に伝えるネット番組「ザ・ファクト」から日本語字幕版が公開された。


ウクライナのNATO加盟という問題

この映画は、17世紀以来のウクライナの歴史を紐解くところから始まる。東西の勢力に挟まれた国土は、つねに大国が角逐する戦場となってきた。民族主義運動に由来するネオナチ勢力の台頭は、2014年の「マイダン革命」に象徴される、親欧米化路線の動きとも交錯している。

オリバー・ストーン監督は、ロシアのプーチン大統領へのインタビュー場面で、NATOの東方拡大について問いかける。プーチンは、アメリカ主導の西側陣営が外敵を求めている、との見解を披露する。

そして、この映画のナレーションは、1962年のキューバ危機を引き合いに出す。「キューバが米国の裏庭であるとするならば、クリミアはロシアの玄関口にあたる」と語っている。当時のケネディ大統領は、断固としてソ連のフルシチョフ第一書記と対決して、キューバの基地からミサイルを撤去させた。現在のロシアの安全保障にとっても、ウクライナのNATO入りは、喉元に突き付けられた短剣になるとの論理だ。

「マイダン革命」の虚実

さらに、この映画では、2014年2月の「マイダン革命」の陰影が描き出されている。当時の首都キエフのマイダン広場では、EUとの協定締結の延期に反対する、大規模デモが発生していた。この政変により、親ロ派のヤヌコビッチ大統領は、政権から追放される結果となった。多数の死傷者を発生させた、デモ隊と警官隊の衝突は、まさに市街戦さながらの様相を帯びていた。

こうした動きの舞台裏の事情としては、アメリカ政府高官の盗聴された電話の内容が提示される。ビクトリア・ヌーランド国務次官補とジェフ・パイアット駐ウクライナ米国大使は、会話のなかでウクライナ政変のシナリオを描いていたことが示唆されている。さらにヌーランドは、バイデン(当時、副大統領)とサリバン(現在、国家安全保障担当大統領補佐官)の名前にも言及していた。現在、ヌーランドは国務次官を務めているが、当時の関係者たちは、再びバイデン政権の最高幹部として当事者となっている。

他方で、ロシアに亡命したヤヌコビッチ元大統領は、オリバー・ストーンのインタビューに答えて、マイダン革命が「計画されたクーデターだった」と述べている。また、当時の米国政府との折衝で、最高位の相手は副大統領のバイデンだったと証言している。

なお、2014年の「マイダン革命」を描いた映画としては、『ウィンター・オン・ファイヤー:ウクライナ、自由への闘い(Winter on Fire: Ukraine's Fight for Freedom)』(2015年)が好対照となる。そこでは、デモ活動の参加者たちの証言が紹介されていく。腐敗した政権を倒した抗議活動の勝利として、映像が記録されている。ふたつの映画を観たときに、「マイダン革命」の実相は、より立体的に見えてくることだろう。

トランプ大統領ならウクライナの戦火はなかった

現在のウクライナ危機を受けて、トランプ前大統領は「自分の政権では起きなかったことだろう」と述べて、バイデン政権への批判を強めている。トランプ側近のロジャー・ストーンも『トランプVSディープ・ステート 下』(幸福の科学出版刊)で、2016年大統領選のトランプ勝利を回顧して、以下のように述べている。

トランプがロシアとの現実的な交渉により、緊張緩和を進めようとしていることは明らかだ。しかし、ヒラリー・クリントン(※オバマ政権での国務長官)は、シリアをめぐってロシアとの戦争も辞さない構えだ。つまり、もう一度言うならば、トランプは『平和』の候補者だ。このことは、イラク戦争に強く反対してきたバーニー・サンダース支持者にも、深く訴えかけることになった

オバマ政権や、2016年のヒラリー陣営は、ロシアとの戦争を起こそうとしているように見えた。しかし、私としてはロシアとの戦争を望んではいない。トランプと同じように、私は、ニクソン時代のような緊張緩和を願っている立場だ

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2020年大統領選で誕生したバイデン民主党政権が、オバマ政権と同様の対ロシア敵視路線に回帰していることは、もはや鮮明となっている。今年3月26日にバイデン大統領はワルシャワで、「この男(※プーチン)は権力の座にとどまってはならない」と発言した。本音を吐露したともみられる「体制転換(レジーム・チェンジ)」についての言及は、外交的にも波紋を生じさせている。

情報操作から身を守るには

映画『ウクライナ・オン・ファイヤー』のラストシーンは、以下のメッセージを投げかける。

現代の戦争は、戦車や爆弾だけではなく、情報操作するメディアによっても遂行される。そうしたメディアはウソをつき、隠蔽し、歪曲する。報道するというよりも、ニュースをつくり出している

そして、「情報操作から身を守るための唯一の方法は、気づくことだ」と訴えかけている。

さて、現在の情勢のもとで、プーチン大統領の本心を解明しているのが、2月末に緊急発刊された『ウクライナ侵攻とプーチン大統領の本心』(幸福の科学出版刊)だ。この本のまえがきで、幸福の科学グループ・大川隆法創始者兼総裁は、こう記している。

国際政治を見る眼を持つことは難しい。ただトランプ大統領をアメリカが選んでいたら、ウクライナの戦火はなかったろう。本書にて、国際音痴の日本人と、外国人に、プーチン氏の本心を届ける。別の意見も聞いてみるとよい。

ウクライナ危機は、なぜ起きているのか。プーチン大統領の本当の狙いは何か。画一的なメディア報道とは別の視点も、考え合わせてみる必要があるだろう。

(幸福の科学国際政治局長 藤井幹久)

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