《本記事のポイント》

  • 功利主義の悪:「誰が生きるべきか」は生産性で決定できる
  • 現代の中国でも行われている優生学
  • 「悪魔の書」は障害者をどう見たのか

国連43カ国が21日、国連総会のオンライン会合で、「ウイグル問題」に対して中国に懸念を表明した。フランスの国連大使が日本やアメリカなど43カ国を代表し、共同声明を発表。

声明では、100万人以上が拘束され、拷問や強制不妊手術などが広範囲で行われていると指摘し、中国に新疆ウイグル自治区への国連の調査を受け入れるよう要請した。

異民族や国家によって"不要"とされた人々への弾圧・抹消は、全体主義国家の特徴である。

ヒットラーが、ガス室で"効率よく"何百万人ものユダヤ人を殺処分していたことは、知らない人はいないだろう。だが異民族の虐殺の前に、障害者で"予行演習"をしていた事実は、それほど多くは知られていない。

ヒットラーが首相となって半年も経たないうちに、「遺伝疾患をもつ子孫を避けるための法」が制定され、障害者らの不妊手術が行われた。同法が1934年に施行されてから40年までに、40万人の国民が不妊手術を受けさせられている。

さらに、強制不妊だけでは満足がいかず、障害者にも刃が向けられ始めた。「社会の重荷」とされた知的障害者や精神障害者は、「安楽死」の名のもとに殺処分の対象となっていく。いわゆる「T4」作戦だ(ベルリンに、T4と通称された本部が中心となって、安楽死の組織がつくられたので、こう呼ばれている)。

計画的「安楽死」による犠牲者の数は、20万を超えるとされている。のちにユダヤ人虐殺に使われたガス室は、障害者の安楽死のために初めて実用化されたものである。

障害者は収容後、ガス室に送られたり、生物実験などに供されたりしていった。当時のドイツでは、現在の中国同様、医療関係者は稀に見るほど「人体実験」の機会を得たことになる。そして障害者の処理で「経験を積んだ者」が、ユダヤ人の強制収容所に「栄転」することが多かったという。現代の中国で、チベットの弾圧に手柄を上げた官僚が、新彊ウイグル自治区の担当に栄転するのと似たようなものである。

このおぞましい殺処分の理論的根拠となったのは功利主義の哲学や優生学、法律学者の理論である。

功利主義の悪:「誰が生きるべきか」は生産性で決定できる

功利主義の祖であるベンサムは、自身の哲学をホッブスの哲学の上に築いた。ホッブス同様、個々人は完全に孤立した利己的な個人であると捉える。

そして功利という意味での快苦の総量は「計り得る」とされる。当時、急速に発展した物理学的手法の政治学への応用だった。

だがこの哲学の本質は、古代ギリシアで正義の存在を否定し快楽主義の哲学を築いたエピクロスや、原子論的に物事を見て、強いものが生き残るという適者生存の物理法則こそ正義だと説いたデモクリトス哲学の「焼きまわし」にすぎない。

功利主義は、ある行為が道徳的かどうかは、「快」を生み出す物理的な結果によって測り得るとする。この理論が応用され、ナチス・ドイツでは、ある人物が「生きるべきかどうか」は、「生産性」によって決定されたのである。

社会の負担でしかない労働できない老人、女性、子供、はては戦傷者まで殺されたのは、こうした理由からである。

現代の中国でも行われている優生学

もう一つ大きな影響を与えたのが、優生学だ。もともとはダーウィンの従弟にあたるイギリスの科学者フランシス・ゴールトンによって作られた学問である。

優生学は「生物の遺伝構造を改良することで、人類の進歩を促そうとする科学的な社会改良運動」と通常定義されるので、遺伝子操作でスーパー兵士の"創造"を行い、神をも畏れぬ人間の「改良」行う現在の中国の実験はこの「優生学」の一つの系譜をひくものである。ナチス時代の優生学には、裏宇宙の指導が入っていたことが明かされている(『ゾロアスター 宇宙の闇の神とどう戦うか』)。

「人類を改善し、より優れた人種を目指したい」という動機によって始められた学問ではあったものの、「科学的に劣っている」「社会のお荷物で役に立たない」と認定された人々を、学問の名において抹殺することに寄与してしまう。

「悪魔の書」は障害者をどう見たのか

さらに挙げるとすれば、唯物的法解釈であり、法律学者の堕落であろう。

ナチスの安楽死計画の理論的論拠を提供した『生きるに値しない命を終わらせる行為の解禁』という本がある。ドイツを代表する刑法学者と精神医学者によって書かれ、1920年代に発刊された本である。

この書は長らく「悪魔の書」として封印されてきた。それだけの理由はある。本書の共同執筆者で刑法学者のビンディング氏は、自然法思想に対する倒錯的理解を説くのみならず、人間に対する徹底した唯物的見解を吐露している。

例えばこうである。

「私はここでも再び、法の観点ばかりか、共同性や道徳、宗教といったどの観点から見ても、まっとうな人間の反対像となり、接した者のほとんどに驚愕の念を呼び起こさずにはおかない人々、そのような人々の殺害を解禁してはならないとする理由をいささかも見いだせない」

これは相模原障害者施設殺傷事件を起こし、死刑判決を受けた同施設元職員の論理とそう違わない。

しかし霊的な眼で見たときの障害者の姿は、唯物的法学者の目に映るものとは全く異なる。

障害を持つ人々の役割について、大川隆法・幸福の科学総裁はこう説いている。

「(彼らは)世の中の人に対して『五体満足に生まれたり、裕福な家に生まれたりすることは、どれほど幸福なことか』ということを教えてくれる"先生"でもあるのです。(中略)豊かな社会のなかにあって、そういう恵まれない人たちは、他の人々が間違わないように、道を外さないように、心の間違いを教えてくれています」(『選ばれし人となるためには』)

驕らずに、美しく純粋に生き続けることの大切さなどを教えてくれる彼らは、実は我々を導いてくれる先生であり、我々を救ってくれる存在である。

宗教性や霊的価値観に裏打ちされていない唯物的科学主義が、ナチス・ドイツという鬼子を生んだ。この「唯物的」科学主義をグロテスクな形で自国民にも行っているのが習近平国家主席の率いる中国である。

宇宙のメシア的存在であるR・A・ゴールが明かしたところによると、中国政府は、高齢者や障害者を殺傷するために、コロナをつくっていたというのだ (『中国発・新型コロナウィルス 人類への教訓は何か』参照)。

現在進行形でナチスと同様の残虐な行為を何のためらいもなくやってのける中国。相模原事件の死刑囚の存在が社会的に許されないのなら、それを国全体で行うような中国との共存は不可能だという価値判断をしなければならない。

そうして初めて、ナチス時代に亡くなられた方々の教訓を汲み取れたと言えるのではないだろうか。

もっと言えば唯物的科学の問題は、中国などに限られた問題ではない。

早くからナチス・ドイツを全体主義と言ってはばからなかったチャーチルは、こう述べたことがある。

「(科学と)慈悲心や平和、愛というものがともに成長しない限り、人間を偉大としたものを破壊するでしょう」

科学と宗教が両輪で発展しない限り、高齢化社会が進む日本で「誰が生きるべきか」を政府が人間心で判断する近未来もあり得る。

優れた政治、経済、科学のモデルが、深い霊的人生観から生まれてこなければならない。それが現代に生きる我々の課題であり存在意義となる。

(長華子)

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