2011年6月号記事
第2部 日本を蝕む3つの危機
(1)「成長はいらない」という思想──社会主義が復活する
「節電」と「自粛」。
3・11後の経済は、まさにこの二つの言葉に象徴される。
しかし、街灯の消えた幹線道路、暗い駅構内、明かりを消した飲食店、マイクを使わない店舗の呼び込み、不自然なほど静かな選挙活動──と、街から活気がすっかり失われてしまった。残業はなくなり、休業で自宅待機するビジネスパーソンも多い。花見やお祭り、スポーツイベントも、なぜかタブーに。
むろん原発事故などで東京電力の電力供給が約4割もダウンしたため、ある程度の節電は必要だ。しかし、国民挙げての節電の結果、計画停電は思うほどには実施されず、4月6日に原則廃止とすることが決定された。結局、節電も自粛も明らかに「やり過ぎ」だったわけだ。
「津波後の日本は自粛という新たな脅迫観念に襲われた」
3月28日付米ニューヨーク・タイムズ紙は、こう題して、「もともと停滞していた日本経済に(過剰な自粛が)侵食効果をもたらし、倒産を急増させるだろう」と訴えた。
実際、内閣府が8日に発表した景気ウォッチャー調査では、景気の現状判断DI(注1)が前月比で20・7ポイントの低下と、2000年の調査開始以来、最大の落ち込みを記録している。