2021年9月号記事
ニッポンの新常識
軍事学入門 14
近未来兵器「レールガン」とは何か
社会の流れを正しく理解するための、「教養としての軍事学」について専門家のリレーインタビューをお届けする。
元陸上自衛隊中部方面総監
山下 裕貴
(やました・ひろたか) 1956年、宮崎県生まれ。第三師団長、陸上幕僚副長、中部方面総監などの要職を歴任した元陸将。陸自の特殊部隊「特殊作戦群」の創設にも携わった。現在、千葉科学大学と日本文理大学の客員教授を務める。著書に『オペレーション雷撃』(文藝春秋)。
アメリカは現在、「第三のオフセット(相殺)戦略」によって、中国とロシアの軍事力を圧倒しようとしています。
この考え方は、敵の持つ能力とは異なる分野、つまり先進技術の開発など別のアプローチをとることで非対称手段を獲得し、敵の能力を相殺しようというものです。
例えば冷戦期では、旧ソ連陣営のワルシャワ条約機構軍の機甲戦力が、NATO(北大西洋条約機構)軍を大きく上回っており、ドイツのフルダ峡谷を抜けば、欧州を蹂躙する恐れがありました。兵力で劣るNATO軍は、ワルシャワ条約機構軍を圧倒するために、アメリカの核兵器による大量報復能力をもって、抑止しました。