《本記事のポイント》

  • バイデン政権下で、中国は一気呵成に勢力を拡張する可能性が出てきた
  • 戦争の発火点としての「第一列島線」
  • 「第一列島線」の防衛の成否は世界を大きく変える

トランプ前政権が任期終了前に、「インド太平洋戦略」の枠組みに関する機密文書を公開した。文書は、ホワイトハウスが2018年2月にまとめたものである。尖閣諸島(沖縄県石垣市)や台湾が位置する「第一列島線」の内側を守り、「紛争時に中国の持続的な制空・制海権を認めない」としている。

ジェームズ・ファネル元米海軍大佐は、米ラジオ番組に出演し、「この機密文書が国民に公開されたのは、トランプ政権下で行われてきた効果的な対中政策から、バイデン政権が逸れた場合に、責任を取らせることが目的だ」と述べた。

加えて、「これまで第二列島線内で米軍は中国を抑止できるとしてきたが、機密文書で示された第一列島線の内側においても、中国を抑止すべきだとした今回の戦略は非常に挑戦的なものだ」と述べている。

ハッピー・サイエンス・ユニバーシティ(HSU)で安全保障学や国際政治を教える河田成治アソシエイト・プロフェッサーに、第一列島線を守り抜くことの意義について、改めて聞いた。

(聞き手 長華子)


恐ろしい「文化的に無敵になる」戦略

元航空自衛官

河田 成治

河田 成治
プロフィール
(かわだ・せいじ)1967年、岐阜県生まれ。防衛大学校を卒業後、航空自衛隊にパイロットとして従事。現在は、ハッピー・サイエンス・ユニバーシティ(HSU)の未来創造学部で、安全保障や国際政治学を教えている。

中国中国は、中華人民共和国建国から100年目の2049年までに、アメリカを出し抜き、世界覇権を握る計画を持っています。これが中国問題専門家のマイケル・ピルズベリー氏が名付けた中国の「100年マラソン」です。

2012年に習近平氏が共産党総書記に就任して早々、「中国の夢」として、「中華民族の偉大なる復興」を掲げましたが、これを一言でいえば、「2049年までに、世界で唯一の超大国として経済・軍事・文化的に無敵になる」という宣言でした。

「文化的に無敵になる」という点は、思いのほか重要です。これは、独裁国家の政治体制を他国に押しつけ、中国を頂点とした全体主義で世界を覆う決意を語っていると言えます。17世紀に生まれ、現代の国際秩序の原則となっている主権国家同士の対等な国家関係(ウェストファリア体制)に真正面からNOを突きつけるものです。

さらに習近平氏は、2035年に「社会主義現代化強国」の完成を目指すとしています。2035年には習近平氏は83歳になります。現役のうちに、世界制覇の達成を目指しているのでしょう。

また2021年は、中国共産党立党から100周年を迎える節目です。したがって今年、成果を求め、積極的なアクションを起こしたとしても何ら不思議ではありません。

そういった「中国の夢」の実現には、第一列島線の内側を中国の聖域とすることが大前提となりますが、トランプ政権は、それを阻止すると戦略文書に入れていたということです。

言い換えればバイデン政権では、第一列島線以西の米軍の関与が疎かになる可能性を危惧して(例えば南シナ海や台湾海峡での「航行の自由作戦」があまり行われなくなるなど)、あえて機密を解除して内外に示す目的があったのでしょう。バイデン政権も引き続き中国に甘くなってはいけないとクギを刺したと見るべきではないかと思います。

バイデン政権下で、中国は一気呵成に勢力を拡張する可能性が出てきた

これまで中国が経済的にアメリカに追いつくのは2035年ぐらいで、その頃に米中覇権戦争が起きるのではないかと予想されていました。

しかし大川隆法・幸福の科学総裁は、2020年12月8日の法話「"With Savior"─救世主と共に」で、「もしウィルス戦争とトランプ落選が重なったことで、2020年段階で習近平さんが覇権を握ったと思ったとしたら、この15年から20年で、世界の戦略地図が、一気に変わります」と述べています。

習近平氏は、コロナによる生物兵器の戦争を仕掛け、トランプ大統領の再選阻止に成功したことで、強気になっており、2035年頃と思われてきた米中の対決が、前倒しされる可能性が出てきました。

特に歴代の米民主党政権は、敵対国家に宥和的に対処することが多くありました。その外交方針は、かえって相手の増長を許し、アメリカが対応できなくなり戦争に至るというリスクを孕んでいるのです。バイデン誕生誕生でかえって戦争の危機が近づいたと思います。

戦争の発火点としての「第一列島線」

その戦争の発火点として最も注目されるのが、第一列島線での戦争です。

第一列島線に含まれる戦争の危機は、大きく分ければ、(1)台湾、(2)尖閣・沖縄、(3)南シナ海ということになります。

通常、国家は大国化してくると、海上進出を始めます。貿易などの経済活動においては、陸上の鉄道やトラックなどに比べ、海上輸送が数倍以上も優れているからです。

中国はもともと大陸に繁栄を求めるランド・パワーの国家でしたが、経済成長と共に、海洋の支配が死活的に重要だと気づくようになりました。

ところが、中国が大海に進出するためには、第一列島線上の島々である、沖縄~台湾~フィリピン~ブルネイ~インドネシアといった他国周辺を通過する以外にありません。そのため、これらの地域を中国のコントロール下に置くことが重要となったわけです。

そこで中国がアメリカなどから攻撃を受けないために、この第一列島線以西である、東シナ海、南シナ海を支配下において、この海域で日米に自由な軍事的活動をさせないことを目標としました。

中国の第一目標は、第一列島線以西における、中国軍の航空戦力・潜水艦・ミサイルなどの優位性の確立です。

米シンクタンクのランド研究所の分析によれば、2017年時点での米中の軍事パワーの比較では、南シナ海において、9つの評価項目のうち、4つの項目で米中がほぼ拮抗、3つでやや米軍有利、2つで明らかに米軍有利の状況でした。台湾においては9項目のうち、2つでやや中国優位、4つで拮抗、3つでやや米軍優位であり、ほぼ互角との分析が示されました。

「第一列島線」の防衛の成否は世界を大きく変える

今後も中国の軍事的な増強が進んでいくことで、第一列島線における日米と中国の軍事バランスは、中国側に有利になる恐れがたいへん高まっています。

戦争または、台湾の政変、フィリピンが中国側に寝返る等が起きて、もし第一列島線を突破されれば、アメリカは西大西洋から駆逐され、東アジア諸国は、中国の勢力下に置かれることになります。

特に第一列島線上で最重要の米軍基地は、沖縄にあります(下地図参照)。したがって沖縄から米軍基地がなくなれば、間違いなく第一列島線での防衛は破綻します。

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米軍基地がある地点。


アメリカにとってアジア地域の最重要同盟国は日本です。米軍は海外41カ国に展開していますが、最大の駐留国は日本であり、約5.6万人います。沖縄から米軍が撤退するということは、日本の防衛だけではなく、アメリカの力がアジアに及ばなくなることを意味します。

つまり、米軍の海外展開戦略は破綻し、インド太平洋地域をはじめ、世界の勢力図は大きく変化するのです。

アメリカのインド太平洋軍は、世界の半分を管轄します(下地図の青い部分を参照)。その西半分、つまり西太平洋~インド洋は第七艦隊の管轄下にありますが、その母港は横須賀にあります。

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インド太平洋軍の管轄


また沖縄は、地政学的・戦略的にとても重要で、アメリカの世界展開を担っています。

このように日米同盟は、アメリカの繁栄と安全保障戦略にとっても極めて重要な位置付けにあります。

したがって第一列島線の防衛は、日本にとって国防問題そのものであり、アメリカにとっては世界の繁栄と秩序、平和を守る最重要の地域なのです。

加えて、イギリスも新型コロナウィルスで苦しむ中、空母艦隊をアジアに常駐させる計画があります。イギリスは昨年秋に、空母「クイーン・エリザベス」に加え、駆逐艦2隻、フリゲート艦2隻、補給艦1隻、給油艦1隻、潜水艦1隻の計8隻程度の空母打撃群を編成して、今年初頭にインド太平洋地域に展開させる予定を発表しました。この地域が今後の繁栄の中心になるとの考えがあるからです。

国際情勢の不透明感が高まる中、日本がリーダーシップをとるべきという期待が高まる

宇宙存在のR・A・ゴールは今年1月1日、「日本型の社会が望ましいと思う国々をまとめていくことは可能で、かなり厳しいですけども、違ったかたちでの大東亜共栄圏の変化形を始めていかなければいけないと思います」と提言していました(「UFOリーディング R・A・ゴール」)。

また大川総裁は、前出の法話「"With Savior"─救世主と共に」で、「2021年1月以降に何が起きるか。これは香港、台湾、北朝鮮、韓国、日本、フィリピン、インドネシア、オーストラリアまで含めて、アジアのものすごく大きな考え方のシフトが起きる可能性があります」と未来を予測しました。

この意味するところは、2つのシナリオが考えられます。一つは、中国の力が巨大化し、第一列島線周辺国が中国文化圏に入るシナリオ。もう一つは、日本がリーダーシップを発揮し、価値観を同じくする同盟国との連携を強化し、中国の脅威に対抗していくというシナリオです。

前者のシナリオを防ぐには、日本は今一度、第一列島線の重要性を理解し、この列島線の内側を守り抜くことが「全体主義との戦い」に備えることであると、改めて認識する必要があるのです。

【ご案内】

HSU未来創造学部では、仏法真理と神の正義を柱としつつ、今回の「インテリジェンス」などの生きた専門知識を授業で学び、「国際政治のあるべき姿」への視点を養っています。詳しくはこちらをご覧ください(未来創造学部ホームページ)。

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