《本記事のポイント》
- ツイッターによるトランプアカウントの永久凍結に対し、各国から批判の声
- 一民間企業に「言論の自由」が奪われかねない、異様な状況が起きている
- IT大手による「検閲」と「ダブルスタンダード」の問題に、声を上げるべき
米議会が占拠された事件を受け、米ツイッターはこのほど、暴力を扇動する危険があるとして、ドナルド・トランプ大統領のアカウントを永久に凍結したと発表。同じく米フェイスブックも、トランプ氏のアカウントを無期限凍結した。
この動きに対し、ドイツのアンゲラ・メルケル首相をはじめ、各国から懸念の声が上がっている。
民間企業に許される「権限の幅」とは
独政府のザイベルト報道官は11日の記者会見で、「表現の自由は基本的権利として重要だ」とし、「干渉する場合は法に従うべきであり、SNS企業の経営陣が決定すべきものではない」と表明。「この観点から、メルケル首相はトランプ氏のアカウントが永久に凍結されたことを問題視している」と結び、メルケル氏の公式見解を明らかにした。
報道によると、フランスのルメール経済・財務相も11日、トランプ支持者による米議会占拠は「トランプ氏のウソの結果」としながらも、ツイッターをはじめとするIT大手がトランプ氏のアカウントを停止したことに「ショックを受けた」と述べ、「デジタル寡頭制」に歯止めをかけるべきと警鐘を鳴らしているとのことだ。
またブラジルでは、ジャイル・ボルソナロ大統領の三男で連邦下院議員のエドゥアルド・ボルソナロ氏が、自身のツイッターアカウントのプロフィール画像をトランプ氏のものに変更し、ツイッターの判断に抗議の意を示した。
民間企業で許されている「権限の幅」をめぐり、国境を越えて議論が湧いている。
「言論の自由」を奪う力と「ダブルスタンダード」の問題
ツイッターは3億人、フェイスブックは27億人以上のユーザーを持ち、今や最も影響力を持つ情報発信手段とも言える。
それほど大きな力を持つ企業が、法的規制を受けることもなく、大統領の言論すら一瞬で抹殺することができる──。民主主義の前提となる「言論の自由」が奪われかねない、異様な状況だ。
このようなIT大手による権限の逸脱に加え、無視できないのが検閲における「ダブルスタンダード」だ。
ツイッターは、トランプ氏や保守派の投稿を「フェイクニュース」や「暴動の扇動」であるとして警告や削除措置をとる一方、中国政府の高官がオーストラリア軍を侮辱するような加工画像を投稿したことに対しては、豪政府から削除を求められたにもかかわらず、「センシティブな」内容を含む投稿に指定するにとどめた。
さらに、米ニュースサイト「インターセプト(The Intercept)」によると、ツイッターは2019年、中国国営メディア「環球時報(グローバル・タイムズ)」から資金提供を受け、新疆ウイグル自治区における中国の統治を正当化するようなものを含め、同メディアによる英語ツイートがより多くのユーザーに表示されるよう取り計らったことが明らかになっている。
国連人種差別撤廃委員会が18年時点で、約100万人のウイグル人が理不尽に強制収容所に入れられていると中国共産党を非難したことを踏まえると、グローバル・タイムズの発信は"フェイクニュース"にあたり、検閲対象になりこそすれ、拡散対象にはならないはずだ。
結局は、「フェイクニュース」や「ヘイトスピーチ」などといった名目で、IT大手が自由に投稿を検閲できてしまっているのが現状だと言える。
このまま巨大化するIT大手の問題を看過してしまえば、あらゆるインターネットのプラットフォームから特定の言論のみが排除される、国境を超えた「監視体制」が完成する可能性も否定できない。
少なくとも、独占的地位を占める民間企業によって「言論の自由」を侵害するような検閲が行われているという事実、そして慎重であるべき検閲においてダブルスタンダードになっているという問題に対し、各国は正面から議論を行い、メスを入れる必要があるだろう。
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