2021年2月号記事
Divine Economics
サプライサイド経済学の父 ラッファー博士
冷戦を平和裏に終結
Part 07
レーガンには冷戦を終結させたという偉大な功績がある。
ゴルバチョフとの間に築いた人間関係など、背景について具体的に語ってもらった。
(聞き手 長華子)
アーサー・B.ラッファー
1940年生まれ。イエール大学を卒業後、スタンフォード大学で博士号を取得。経済調査とコンサルティングのラッファー・アソシエーション会長。サプライサイド経済学の父。レーガノミクス、トランポノミクスを導いた。大統領選挙中よりトランプ氏の経済政策顧問を務める。著書に『増税が国を滅ぼす』(日経BP社)、『トランポノミクス』(幸福の科学出版)などがある。
──今回は、レーガン大統領の人柄を示すエピソードも踏まえて思い出を語ってもらえますか。
ラッファー博士(以下、ラ): 最初に、レーガンとマーガレット・サッチャーとの出会いに関する逸話についてお話ししましょう。
初めてサッチャーに出会ったのは、カナダのオタワでG7が開催された時です。G7は、肩書や社交辞令的なことを抜きにし、個人的なつながりを重んじる場で知られています。最後に到着したレーガンは、「ロニー」ですと自己紹介しています。
その場でレーガンは、開催国カナダのピエール・トルドー首相(当時)が、サッチャーに対して非常に失礼な態度を取り始めたのを目の当たりにします。「アーサー、僕は湯気が頭から立ち上るぐらいカンカンになったんだ。G7に行ったのは初めてだったので、最初は何も言わなかった。でもコーヒーブレイクの時間に、サッチャーのところに行き、『トルドーが君にひどいことを言って、扱いが失礼だ。僕はここが初めてでどんなルールなのか分からないので何も言えなかったが、僕が君の扱いに怒っていることは知ってほしい』と伝えにいった。するとサッチャーは、『ロニー、心配いらないわ。私たち女子は、男子が、ただ男子として振る舞っているにすぎないと分かっているのよ』と答えたんだ」
「男子は振る舞いが悪いことなんて知っているわ」と言われたというのは、彼から聞いた面白い話の一つです。
2つ目は1983年のグレナダ侵攻に関するものです。
カリブ海に浮かぶグレナダでは、ソ連派がクーデターを起こした。それを危険視したレーガンは、グレナダにいるアメリカ市民の安全を確保するために、7000人の海兵隊を送り、親ソ政権の成立を阻止しました。
外交政策について詳しくなかったので、この事件は私の興味を掻き立て、レーガンに「どうやって意思決定をしたのですか」と尋ねた。すると「俳優のジョン・ウェインだったらどうしたと思うかね」と、俳優の物真似をしながら答えてくれた。レーガンとのやり取りの中でとても面白かったものの一つです。
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