フェイスブックやグーグルなどの米IT企業が保守派の言論を検閲するなどして、大統領選において民主党に有利な言論空間をつくり出していることが、アメリカの各方面から問題視されている。

この問題は数年前から表面化し、日本ではあまり一般的にはなっていないものの、言論の自由が失われている問題は、民主主義の危機と言える。この問題を日本に置き換えて言えば、IT企業が一方的に政治家らの言論をチェックしているようなものであり、日本にとっても他人事ではないだろう。

そうした問題を考えるべく、2018年8月号本誌の記事を再掲する(内容や肩書きなどは当時のもの)。

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ネットで危機に瀕する民主主義

「ある日、僕のフェイスブックのニュース画面から保守のニュースが消えていた」

そうTEDで語るのは、政治活動家のイーライ・パリザー氏(*)。

フェイスブックやグーグルなどの多くのサイトでは、大量の個人情報を分析するアルゴリズム(計算方法)によってユーザーの好みに合わせた情報が届けられている。

これは一見、便利に見える。自分の好きな情報にだけ触れることができるからだ。一方で、私たちの許可なく、関係のないと思われる情報を「勝手」に排除していることを意味する。

まるでフィルターに遮断されたように、特定の情報しか見られない。この状況を「フィルターバブル」という。フィルターバブルは、異なる意見に触れる機会が減り、対立が煽られてしまうため、アメリカではフェイク・ニュースよりも問題視され始めている。じきに日本でも話題になるだろう。

(*)2011年に米非営利団体TEDでパリザー氏は講演し、「フィルターバブル」によって、ユーザーは、「情報のジャンクフードに囲まれる」と問題提起した。


巨大IT企業の恣意的な検閲

実は、フェイスブックやグーグルなどは、独自の検閲基準を持っている。その基準は外部に公開されていないため、私たちはそのページが表示されない理由が分からない。

ただ保守的な考えが狙いうちされていることは事実だ。例えばフェイスブック内部では、トランプ氏の言論をヘイト・スピーチとして、削除すべきという議論さえあったという。

グーグル傘下のツイッターも、米下院議員の妊娠中絶反対のキャンペーン広告を停止。同社は、トランプ氏を支持したり、愛国心や神を敬う考えなどを持ったりする人物を掲載しない傾向にある。1月に米上院で行われた公聴会で、ツイッターはその偏向姿勢を問い質されている。

トランプ氏は、大統領選挙期間中に、「グーグルからヒラリー批判の記事が消えている」と主張していたが、あながち嘘とは言えないだろう。


GAFAが分断をつくりだす

そもそも、GAFAのアルゴリズムが気にかけているのは、「ユーザーの接続をいかに長くするか」である。接続時間が長いほど、広告をクリックし、消費者がお金を払うようになり、収益を上げられる仕組みとなっている。アマゾンの場合は、あなたにとってのお薦めを表示して「ついで買い」を増やす。この仕組みで収益の35%を上げている。

一方で、真実の追求や、有意義な対話が行われるかどうかなどについては無関心。したがって、グーグルやフェイスブックのアルゴリズムがお薦めする「情報」や「モノ」ばかりを仕入れていると、世界につながっているつもりでも、実際はますます孤立し、意見の異なる人と対話することができない人となってしまう。いわば、「情報の引きこもり」を生んでいるのだ。


アルゴリズムに倫理がない

良質なジャーナリズムは、民主主義に必要不可欠。既存のメディアは、曲がりなりにも「真実の探究」を目指し、多様な視点を考慮に入れつつ、ニュースを報道するなど、1世紀にわたって、ジャーナリズムの倫理を発展させてきた。だが、巨大IT企業のアルゴリズムは、そうした倫理を持ち合わせていない。このため、ネットだけで情報を得ていると、人は良識を持つことができなくなり、民主主義の発展も阻害されてしまう。

「メディアを制するものは、世界を制する」と言えるなら、GAFAは、国境を越えて「第一権力」となりつつある。だが、この権力を誰がチェックしているかといえば、「誰もいない」。このままでは人類はGAFAの下で奴隷のようになりかねない。


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