ウィラード米太平洋軍司令官は12日の上院軍事委員会で、改修を進めている中国の空母が早ければ今夏試験航海を始める可能性があるとの見通しを示した。

中国は1998年にウクライナから未完成の旧ソ連製空母「ワリャーグ」を購入し、大連で改修しているが、これの改修作業がほぼ終えたことを指していると見られる。「ワリャーグ」は今月6日に中国国営の新華社通信が初めてその写真を掲載し、今年中にも試験航海を行うと伝えていた。

同司令官は、「実戦能力を得るには長期の訓練や整備が必要」としているが、アジア太平洋の周辺諸国は「軍事バランスの変化の象徴と受け止めるだろう」と指摘した。

実際、中国の空母が実戦配備されれば、伊豆諸島を起点に、小笠原諸島、グアム・サイパン、パプアニューギニアに至るラインの「第二列島線」まで制海権を握ることができるとされる。また中国は、「空母キラー」と呼ばれる対艦弾道ミサイル「東風21D」の配備も始まっていると見られている。これは、米海軍の空母など航行中の艦艇を撃破する対艦弾道ミサイルで、台湾有事の際に、米軍が近海に進出するのを防ぐ。つまり、これらにより、中国による台湾併合が可能性を帯びてきている。

当然、こうした中国の動きに最も危機感を覚えているのが台湾だ。台湾の国防部(国防省)は11日から5日間の予定で陸海空軍合同の軍事演習「漢光」を開始。12日には、中国のミサイル攻撃で空軍基地が破壊された想定で、南部の台南市で高速道路を閉鎖し、空軍の主力戦闘機「F16」や「ミラージュ2000」などを含む戦闘機の離着陸演習が公開された。高速道路を使用した離着陸訓練は4年ぶりとなる。

台湾の高速道路は4カ所が軍用滑走路に転用できる。その点、日本は道路が狭く、国道クラスの道路における4車線以上の比率は低い(2001年時点で、米国39.6%、フランス21.0%に対し、日本は12.1%)。だが、中国の空母や対艦弾道ミサイルの実戦配備が完了すれば、日本が置かれる条件も台湾と同じだ。

関東大震災後に、帝都復興院総裁となった後藤新平は、帝都復興計画を策定、幹線道路の幅員を40間(約72メートル)とする案などを提出していたが、その後の審議で大幅に縮小されていった。だが、台湾のように有事の際を考慮して、空軍基地の代用にもなる広い道路をつくっておく必要がある。まずは東日本大震災の復興計画に、広い幹線道路の建造を入れるべきだろう。(吉)

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