2020年7月号記事
幸福実現党 党首
釈量子の志士奮迅
第92回
幸福実現党党首
釈量子
(しゃく・りょうこ)1969年、東京都生まれ。國學院大學文学部史学科卒。大手企業勤務を経て、(宗)幸福の科学に入局。本誌編集部、常務理事などを歴任。2013年7月から幸福実現党党首。
釈量子のブログはこちらでご覧になれます。
「9月入学」でごまかすな
緊急事態宣言によって、9割近い小中学・高校が、約3カ月もの間、休校を続けました。その多くは再開していますが、「学習遅れをどうするか」という深刻な問題が残っています。
そんな中で持ち上がっているのが「9月入学制」への移行案です。「これでグローバルスタンダードだ。G20の中で、4月入学は日本とインドだけだった」と歓迎する声も多く、政府も本格検討を始めています。
しかし、拙速な導入を不安視する声も出ています。強行すれば約2万8千人の教員が不足し、保育所の待機児童も26万人になるなど、大混乱を招くという研究もあります(苅谷剛彦・英オックスフォード大教授の研究チーム)。
私学にとっても、ダメージは計り知れません。早稲田大学の田中愛治総長も、9月まで授業が再開されなければ授業料の納入が滞り、「私立の小中高大とも2割から4割は倒産を余儀なくされる」と警鐘を鳴らしました。
そもそも、入学時期を世界に合わせたからといって、国力は増すのでしょうか?
教育の内容そのものを改革せずして、海外の人材が簡単に集まって来るかは疑問です。それどころか、日本人の優秀な学生が流出しやすくなります。彼らが日本に帰って来ればいいですが、経済の先も見えず、税金ばかり増えるこの国から、脱出したい若者も増えています。
休校による「学習遅れ」という課題が残っている。写真:アフロ
一斉休校は不要だった
さらに気になるのは、「『9月入学制』で学習遅れ批判をごまかそう」という発想が、見え隠れすることです。
もし新型コロナウィルスの第二波がやって来たら、どうするのでしょうか? 先送りを繰り返せば、「教育を受ける権利」を脅かすことにもなります。
今回の一斉休校は、冷静に見れば必要はありません。「インフルエンザに準じた対応」で十分だったと思います。
5月7日時点で、日本で重症化した10代は1人、10代未満は1人。死者はともにゼロです。厚生労働省のクラスター対策班の押谷仁教授は、感染者の年齢が低いほど、人に感染させるウィルス量が少ないと指摘しています。
一方、休校が続くことによる"副作用"は甚大です。
ショッキングな話ですが、一斉休校によって中高生からの「妊娠相談」が増えていることを、熊本県の慈恵病院が発表しています。「新型コロナによる休校の影響で在宅の時間が増え、交際相手との間に望まない妊娠をするケースが目立つ」というのです。その他にも、会社を休まなければならない親御さんへの経済的負担も馬鹿になりません。
政治家のヒステリックな発信や恐怖を煽るマスコミの報道も問題です。日本中が「安全でも安心できない」という空気から目を覚まさねばなりません。
何があっても学問は止めない
コロナ禍の中、教育に必要なのは「二宮尊徳的な精神」だと思います。
両親が亡くなり、十代の初めに伯父の家に預けられた金次郎は、昼は身を粉にして働き、夜は灯をともして書物を読み学問に励みます。ところが伯父から「油の無駄使いだ」と叱られます。それでも金次郎は菜種を植え、翌年収穫して燈油に変えて学問を続けた、という話は有名です。
どのような環境にあろうとも、努力を積み重ねる─。激動の時代の中で、真なる学問が未来を拓く力になることを証明する人材が、再び現れてくることを信じてやみません。