《本記事のポイント》

  • タクシー会社が荷物の輸送解禁に
  • 事業を守る規制が、足かせになる場合も
  • 事業維持のために規制緩和を

本欄では9日、酒造メーカーが消毒用アルコールの販売を許可されたことに関して報じた( 酒造メーカーが事実上の消毒用アルコールを販売 コロナ問題を規制緩和のチャンスに )。このほかにも、コロナ問題を機に様々な規制緩和が進められている。

タクシー会社の荷物輸送

宅配のニーズが増え、乗客が減る中、国土交通省はこのほど、タクシーを使って荷物を運ぶことを特例で認めた。申請があれば、早ければ2日ほどで許可を出すという。

これまで、政府の規制改革推進会議で、「タクシーの車両を利用した貨物運送」の規制緩和が求められてきた。トラック業界のドライバーが不足する中、小回りの利くタクシーでの買い物代行や病院の代理受付、忘れ物のお届けなどのニーズが生まれているためだ。

人工呼吸器の異業種参入

厚生労働省は、人工呼吸器の増産のため、自動車や電機など異業種のメーカーの参入を促している。これまで、国や都道府県の承認や登録などの手続きのために4カ月ほどが必要だったが、その手続きを数日に縮める。

製造過程や品質管理の審査を書面で済ませ、実地調査を事後とすることで時間を短縮する。安全性については、「既存のメーカーと協力することで担保する」としている。

大手銀行の資本に関する規制を緩和

金融庁は、銀行が積極的に融資を行えるよう、6月末から、総資産に対して一定の自己資本を求める「レバレッジ比率規制」を緩和すると発表した。企業の資金繰りを支援できるようにする目的で、日銀に預けている預金は除外することができる。

事業を守る規制が、足かせになる場合も

それぞれの規制は、「事業者を守り、消費者を守る」という前提で設定されたのだろう。品質の保持や雇用の確保、事業体の維持が目的だったはずのものがほとんどだ。

しかし、変化の多い時代、危機の時代に企業が生き残るためには、新たなサービスを展開し、常に変化させていく必要がある。規制は少ない方がよいのである。

元々、「タクシーの利用者が減り、荷物の輸送が増えている」という社会情勢の変化を受けて、タクシー会社から荷物輸送を認めるよう要請の声が上がっていた。数年間検討されてきて、緊急事態だからと規制が撤廃されたが、本来必要な規制だったのか疑問だ。

経営者にとってみれば、事業形態を変えるかどうか、判断の数日の遅れが、資金繰りを左右する。新たな事業を行うための行政の許可が出るまで数カ月、場合によっては数年かかってしまう、となれば、生き残るために間に合わないこともある。

コロナの危機に際して、「行政スピードを上げること」「そもそも規制をなくしてしまうこと」が、いかに民間企業を守るか、ということが理解され始めている。

「廃業」「失業」相次ぐ中で……

コロナ問題で外出自粛要請が続く中、ホテルや旅館、飲食店などの廃業が相次いでいる。その他、工場で働く人の解雇も大規模に行われるとみられ、失業率が跳ね上がることも予見されている。

結局、社会の変化や危機的状況を乗り切るのは、民間の一人ひとりである。政府はそれをサポートこそしても、主体になることはできない。国民から集めた血税を、補償として何カ月も何年もばらまき続けることはできない。

民間企業が仕事を続け、雇用を維持するため、変化し続けるためには規制緩和が必要だ。日本が「規制が少なく、小回りの利く自由な国」に脱皮しなければ、今後、いかなる危機が来ても、乗り越えるのは難しいだろう。

(河本晴恵)

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