人民解放軍の軍服を着る海淀校の生徒たち(同校のウェブサイトより)。

《本記事のポイント》

  • 香川県東かがわ市で進んでいた、中国の外国語学校の拠点化計画が撤回された
  • 集まった反対署名は3800筆、市長は計画を断念
  • 「中国依存」が招く安全保障上の危機

香川県東かがわ市で進められていた中国の外国語学校の拠点化計画がこのほど、住民の反対により撤回された。

人口約3万人の同市は、2018年から中国の「北京市海淀外国語実験学校」(以下、海淀校)と交流を重ねてきた。

この中で、同市が海淀校に対し、今年3月31日をもって閉校となる市立福栄小学校の土地・建物を無償貸与する計画を水面下で進めていた。実際に、市議会は18年と19年に、議会視察として北京市にある海淀校を視察している。

市民に知らされていなかった計画

この計画について、19年12月の市議会で、幸福実現党の宮脇美智子市議が一般質問を行った。

宮脇市議は、海淀校の理事長や校長ら4人が同年11月、東かがわ市を訪れ、予定地の視察を行っていたことを取り上げ、「学校の計画についてはまったく知らされていないが、計画の全体像と進捗状況、市民への公表はどうするのか」などと質問した。

市長は、18年に市が海淀校を視察した際、理事長が交流の継続や深化を目指し、「食事や宿泊などに関して、東かがわ市の負担を軽減したい。自分たちで宿泊、食事や学習などができる施設を確保したい」という趣旨の申し出があったことを明らかにした。同時に、市民に対し、さまざまな形で理解を求める機会が必要であることを認めた。

宮脇市議の一般質問の後、市民から、情報開示を求める声が噴出。ようやく今年2月に、地元説明会が行われた。

しかしこの説明会が、計画推進を前提とした一方的な事後報告会だったとして、市民からなる「福栄の将来を考える会」が拠点化に反対する署名活動を緊急で行ったという。

集まった反対署名は3800筆、市長は計画を断念

また、「住民と外国人の間でトラブルが発生したらどうするのか」「外国の学校が拠点化されることにより、外国資本による周辺の不動産買収が誘発される心配がある」などの住民側の不安について、市は一切責任を取れないという姿勢だった。

こうした中、今年3月11日までに反対署名が3802筆となった。そのうち、拠点化の該当地域にあたる福栄地区と五名地区では、住民の過半数の署名が集まった。

反対署名は12日に市長宛てで提出。18日の市議会で、宮脇市議が計画について2回目の一般質問に立ったところ、市長は「先方にお断りし、中止する」と答弁を行った。

中国から世界中に学生を送り出す学校

問題となっている海淀校は、中国から海外に留学する生徒を育てるためにつくられた「私立国際学校」で、幼稚園から高校までを擁する。アメリカにも3つの校舎がある。

日本の学校への進学を目指す日本語コースの児童・生徒は、東かがわ市の小・中学校との交流のほか、日本国内の複数の学校とも交流してきた。

海淀校は、外国語教育の推進のため、ドイツ、フランス、日本に言語実習基地を設置する計画を立てているという。「日本の言語学習基地」の有力候補地が、東かがわ市だった。

学校行事で人民解放軍の軍服を着る学生たち

中国の学校誘致などを考える際に注意すべきは、中国の学校はほぼすべて中国共産党の指導の下にあり、「自由な教育が行える環境にはない」ということだ。

中国では2016年に、義務教育期間の1年生から9年生を対象とした営利目的の私立学校の運営が禁止されており、インターナショナルスクールに対しても、中国に特化した科目を教えるよう指示が出ている例がある。海淀校は私立だが、「北京市海淀人民政府に承認されている学校」だ。

また、海淀校のウェブサイトには、「国防教育」の一環として、人民解放軍の軍服や、準軍事組織の人民武装警察部隊(通称:武警)の制服を着た生徒の写真が掲載されており、軍と強いつながりがあることがうかがえる。

学校周辺の空き家が中国資本に買収される……?

東かがわ市では、2015年から香港のソフトボールチームとのスポーツ交流が行われている。これが布石となり、今回の拠点化につながった。1979年の米中国交正常化の前後に、「米中の卓球選手の交流から始まった」という、中国のいわゆる「ピンポン外交」を想起させる。

地元では数年前より、計画地周辺の土地の買収を求めて訪れる中国人が増えているとの声も上がっている。実際に空き家が多い地域であるため、海淀校の開校によって地域の活性化が期待できるという意見もあった。ただ、今回の問題が明るみに出たのを機に、住民の中で「自分の土地は自分で守る」という機運が高まりつつあるという。

「中国依存」が招く安全保障上の危機

「住民の方への説明もないまま、4月に着工予定だったという情報もありましたが、これは問題です。教育・文化などの交流は素晴らしいと思いますし、中国人の方への差別を行いたいわけではありません。

しかし、わが町で中国資本による土地買収が進めば、その後、何に使われるか分かりません。安全保障上、極めて危ないでしょう。今回は、多くの住民の方々が反対の意思を示してくださったおかげで止めることができましたが、同僚の議員や地域の方などの問題意識を持っている方々と協力して、今後の対応を考えています」(宮脇市議)

歴史を振り返れば、ウイグルやチベットでは当初、中国側が平和裏に土地を買収し、その後、中国軍の拠点にされた事例がある。日本では、外国資本による買収にほとんど制約がなく、用途も不問であるため、今後も他の地域で同様の事態が起きかねない。すでに北海道では、ある村がほとんど丸ごと、中国資本に買収されてしまったところすらある。

経済面での侵略の手口の一つが、「土地買収」だ。現状では、あらゆる面での「中国依存」は安全保障上の危機を呼び込みかねない。「自分の国は自分で守る」という意識を、政治家のみならず、日本人一人ひとりが持つ必要があるだろう。

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