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《本記事のポイント》

  • ジョンソン首相が、公共放送BBCの受信料について「廃止」を検討
  • 首相は「実質的には税金と同じ」と述べ、世論調査でも不満が多数を占めた
  • 保守党には自由主義の精神が流れている。日本の「N国党」とは考え方が異なる

12日(現地時間)に投開票されるイギリス総選挙を前に、ジョンソン首相はこのほど、テレビの所有者が公共放送BBCに受信料を支払う義務があることについて、「今の段階では受信料を撤廃する計画はないものの、必ず検討する」と発言。受信料制度の廃止に含みをもたせた。

イギリスでは、受信料をめぐる問題が積年の課題となっている。

例えば75歳以上の年金受給者は、受信料の支払いを免除され、無償化の負担を政府が肩代わりしている。しかしBBCは、2020年夏から有料化する方針を発表。これに高齢者が反発し、「テレビ離れ」が進む若者からも批判の声が起きている。

そこで、ジョンソン氏が見直しを明言したことで、注目度が高まっている。

「受信料制度は税金と同じ」

ジョンソン氏は9日に、市民から受信料制度について聞かれ、こう答えている。

「誰もがテレビを持っているのだから、受信料という仕組みはつまるところ、実質的には税金と同じではないか」「テレビの所有者がみな、特定のテレビやラジオ番組にお金を払わなければならない制度を、いつまでも正当化しておいていいのか。そこが問題だ」

同氏は、米ネットフリックスのような、視聴者だけが料金を支払う制度への意向を検討。保守党が勝利すれば、年間154.50ポンド(約2万2千円)を徴収される受信料制度が変わる可能性が出ている。

「放送が受信料に見合っていない」と96%が回答

受信料制度をめぐる議論が高まる中、英紙デイリー・エクスプレスは6月に、同制度に関する世論調査を発表。すると、回答者の96%が「BBCの放送は受信料に見合っていない」と回答した(回答者数1万8134人)。

イギリスでは、公共放送への不信感が高いのは間違いない。これに対し、BBCは「ネット配信」を強化し、若者のテレビ離れに歯止めをかけることで、受信料制度を存続させるつもりだ。

ジョンソン首相とN国は考え方が違う

一方で、公共放送に対する不信感が高まっているのは、日本も同じだろう。

日本には、NHK改革を求める「NHKから国民を守る党(N国)」が議席を獲得し、ネット上でももてはやす声がある。

しかし、保守党の政策のベースには、「小さな政府」や「自由主義の精神」が流れている。そうした考え方に基づけば、受信料を払うか否かは個人が選択すべき問題であり、その方が幸福になれるという政策が導き出される。そのため、ジョンソン首相とN国とは考え方が違うことを留意する必要があるだろう。

今回の総選挙は、欧州連合(EU)からの離脱が主要な争点となっている。しかし、公共放送の未来についても関心を払っていきたい。

(山本慧)

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