2020年1月号記事
幸福実現党 党首
釈量子の志士奮迅
第86回
幸福実現党党首
釈量子
(しゃく・りょうこ)1969年、東京都生まれ。國學院大學文学部史学科卒。大手企業勤務を経て、(宗)幸福の科学に入局。本誌編集部、常務理事などを歴任。2013年7月から幸福実現党党首。
釈量子のブログはこちらでご覧になれます。
日本の技術が日本を襲う!?
秘密兵器の技術者が、敵国に誘拐された。このままでは国家の存続が脅かされるため、凄腕スパイが奪還に向かう─。
こんな筋書きを映画でよく見ますが、実世界でも「技術流出」は、世界の勢力図を塗り変えかねない大問題です。
例えば、中国は1970~80年代、発射台を破壊することができない「移動式の核ミサイル」や、迎撃が難しい「多弾頭核ミサイル」を手に入れました。アメリカに核で対抗する「一線」を超えたのです。その技術は、なんとスパイを使ってアメリカから盗んだものだったといいます。
米中摩擦は貿易から技術へ
この「技術流出」が今、国際政治の大きな問題になっています。
世界を揺るがせてきた米中摩擦ですが、「貿易」についての交渉はひと段落しつつあります。
しかしトランプ政権は「技術強奪をやめろ」(*1)とも要求しており、これについては中国も退かないと言われています。
というのも中国は今、ハイテク兵器においてアメリカに対抗できるかどうかの瀬戸際にいるためです。
中国は人工知能(AI)や次世代通信規格「5G」などを用いた兵器を実用化すべく、驚くべきスピードで研究を進めています。しかし、それらを動かすベースとなる「半導体」では、インテルやサムスンなどに数年分の遅れをとっているのが現状です。そんな中、各国から内部文書を盗み、サイバー攻撃するなどして、ハイテク技術をせっせと盗んでいると言われています。
さらに中国は10月下旬、国家主導で約3兆円規模の「半導体ファンド」を設立しました。そこには、他国のハイテク企業を技術ごと買収するといった狙いもあるはずです。
実際、中国企業が多額の債務に悩む米企業に合弁をもちかけ、その技術力で「次世代スーパーコンピューター」を開発。「核兵器」「ミサイル防衛」などに転用したという話もあります。
世界やアジアでの覇権を目指す中国が、再び軍事の「一線」を越えようと躍起になっていることがうかがえます。
トランプ政権は、こうした野望を挫くべく、北京政府に「技術窃盗を取り締まれ」と圧力をかけつつ、中国企業が簡単に米企業を買収できないような規制を強化しています。いわば、先端技術分野に「鉄のカーテン」を敷こうとしているのです。
(*1)「知的財産の窃盗行為」「外国企業への技術移転の強要」をやめる保証を求めている。
中国の建国70周年記念の軍事パレードでも、新兵器が数多く紹介された。写真:新華社/アフロ。
「技術防衛」に万策を
そうした「ハイテク争奪戦」の嵐の中、わが国も無防備であってはいけません。アメリカに技術獲得の門戸を閉じられた中国は、日本にその白羽の矢を立てています。実際に、中国が軍事転用できる技術を持つ企業を買収しに来ているという話をしょっちゅう耳にします。
日本の「技術流出」への脇の甘さは、わが国が誇った半導体産業が、韓国などに追い抜かれ、凋落した、大きな要因です。
バブル崩壊などでリストラされた日本の技術者たちが、韓国のサムスンなどに大量にヘッドハンティングされました。リストラ寸前の技術者たちが、土日にソウルに通い、密かにお金をもらっていたなどという話も……。
わが国の半導体産業はその後巻き返しに入り、「半導体の"製造装置"」の分野で世界をリードしています。
こうした技術を買収や盗用から守るべく、国を挙げて対策をする必要があります。例えば、外資が日本に投資する際、「安全保障上のリスクがないか」を厳正に審査する仕組みなどを早急に整えるべきです(*2)。
それが、自国を滅ぼす武器を相手に渡さないことにつながるでしょう。