1989年に導入されて以来、3%、5%、8%と上がり続けてきた消費税が、ついに10%になります。

今後、さまざまなところで、増税による歪みが生まれることが懸念されています。

今回は、アメリカのレーガン大統領の元アドバイザーであり、トランプ大統領の経済政策アドバイザーである専門家の、日本の消費増税に関する見方を紹介します。

(※2019年1月号本誌記事を再掲。内容や肩書きなどは当時のもの)

◆           ◆          ◆

Interview

繁栄は政府ではなく国民がつくる

日本の消費増税についてトランプ政権の経済アドバイザーに話を聞いた。

元レーガン大統領アドバイザー

トランプ大統領の経済政策アドバイザー

アーサー・B・ラッファー

(Arthur B. Laffer)1940年生まれ。イエール大学を卒業後、スタンフォード大学で博士号を取得。経済調査とコンサルティングのラッファー・アソシエーション会長。レーガノミクスの元となったサプライサイド経済学の父。大統領選挙中よりトランプ氏の経済政策顧問を務める。著書に『増税が国を滅ぼす』(日経BP社)などがある。

──来年の秋に日本では消費増税が予定されています。

ラッファー博士(以下、ラ): 消費税が最初に導入された1989年12月の日経インデックスは、3万8900円台でした。今は2万1000円台です。30年前の約半分ですよ。 日本経済は、1990年代初頭に、消費税の導入によって崩壊し、その後、経済規模は縮小し続けています。

日本の成長を止めた増税

──政府は財政を再建し、社会保障を充実させたいようです。

ラ: その全体の方針は筋が通っているように見えません。 働いている人に課税し、働いていない人に支払いをしたいのです。考えてみてください。そんなことをしていたら、何が起きるでしょうか。

──誰も一生懸命働きたくなくなりますね。

ラ: 本当に愚かな事態を招くことになります。

日本は先の大戦後、世界で一番高成長を遂げていた時期がありました。まるで奇跡で、素晴らしい経済成長でした。雇用もたくさんあって、繁栄していました。それは減税と関係しています。

マッカーサーが日本を統治していたとき、日本にとても高い税金をかけていました。彼が去ったとき日本は大幅に減税をしました。その結果、非常に速いスピードで日本は成長したのです。

──社会保障を最優先にする日本の方針をどう見ますか。

ラ: 社会保障は、一定の限度の範囲内では必要なものです。そのためには、働いて生産し、国を繁栄させる人々がいなければいけません。ですから、 政府の最優先事項は、国民の繁栄であるべきです。 政府は、富を創り出すわけではありません。稼いだ人からもらって、働いていない人に再分配するだけですから。

減税で税収は増える

──しかし、アメリカの大型減税の効果は持続しないとの見解もあります。

ラ: それは当たっていません。ケネディ政権下で行われた減税効果はその後も続き、GDPは5%台で成長しました。大幅減税を実施したレーガン政権下では、83年1月から84年6月末までの1年半で12%の成長を遂げたのです。キャピタルゲイン減税を行ったクリントン政権のときも高い経済成長を遂げました。

減税し、規制緩和を行い、自由貿易をし、安定した通貨政策と政府支出のコントロールを行えば、4~5%台の経済成長を数年にわたって続けられるはずです。

──日本では、減税をすれば、歳入が減り、政府債務が増えるという議論が一般的です。

ラ: たしかに一時的に、減税すれば、歳入は大幅に減ります。しかし経済成長率が高くなれば、次第に歳入は増えていきます。

成長自体が富を生むには時間がかかります。減税が経済成長という果実をもたらすには、投資による利益を得るのに数年かかるのと同じです。

私はアメリカの歳入は、3年から4年のうちに、増収に転じると見ています。そして向こう10年で、1.5兆ドル(170兆円)の歳入を生むはずです。減るのではなく増えるのです。そして3.3%以上の経済成長率を維持できれば、政府債務残高のGDP比も減少し、増税をしなくても社会保障を維持できます。

2%台と3%台の経済成長率の差は、20年で5.8兆ドル(約655兆円)もの経済規模の差となって現れますから、まず高い成長率を維持して、国民を繁栄させることを目的とすべきです。

政府にいいことは人民に損害

Book

トランポノミクス

トランポノミクス

ラッファー氏とムーア氏の2人がトランプ政権に経済顧問として携わるようになったいきさつから始まる本書。大型減税や規制緩和に向けて2人がどうトランプ氏を応援したかを詳述する。

(10月末発刊・日本語版未定)

──あなたは、さまざまな国に減税政策が行われるようアドバイスをしてきました。

ラ: イギリスでは、サッチャー元首相と減税について語り合いましたが、本当に素晴らしい方でした。所得税を40%にまで下げ、イギリスの国力は復活しました。その他ロシアや、スウェーデン、フランス政府などにもアドバイスをしてきました。私は、各国が減税の競争をするのは素晴らしいことだと思っています。でも政府の役人はそんな競争はひどく不愉快なことだと考えていて、喧々諤々の議論をしてきました。

古くから、「政府にとっていいことは、人民にとって損害をもたらす」という言葉があります。 今の日本政府も減税を主張する人の意見を聞きません。税を上げ、規制を増やし、ビジネスに敵対的だった オバマ政権に似ています。オバマ氏は、繁栄は政府からやってくると考えていたようですが、それは間違いです。

私は日本が繁栄していた70年代から80年代に何度も日本を訪れ、政府にアドバイスをしました。日本を愛していますので、日本がもう一度繁栄し、豊かになるよう、お手伝いしたいと考えています。

【関連記事】

2019年1月号 減税に沸くアメリカ トランプ減税で国民は年85万円を得る

https://the-liberty.com/article/15123/

2018年9月7日付本欄 消費税上げの安倍政権vs. 減税のトランプ政権 2倍以上の成長でアメリカが圧勝

https://the-liberty.com/article/14859/

2018年5月号 Expert Interview - 財政再建には、減税による経済成長しかない

https://the-liberty.com/article/14250/