金体制の崩壊について力強く語る太永浩氏。
韓国に亡命した北朝鮮の元外交官・太永浩(テ・ヨンホ)氏が20日、東京都内の日本外国特派員協会で記者会見した。
太氏は、駐英北朝鮮大使館の公使を務めていた2016年、妻子とともに脱北。現在は韓国で南北統一に向けて活動している。今回の記者会見は、自身の手記『三階書記室の暗号 北朝鮮外交秘録』の発刊に合わせたものだ。核開発の舞台裏など北朝鮮の意思決定プロセスを明らかにした同書は昨年韓国で発刊され、16万部の売り上げを記録した。
太氏は「(金体制による)奴隷の縛りから息子たちを解き放つことは、父親としての義務だと考えた」と脱北を決意した背景を語った上で、記者の質問に答える形で北朝鮮の状況を説明した。
核施設を手放す代わりに核ミサイルを保持する狙い
2月末にハノイで行われた第二回米朝会談では、北朝鮮側が国内5カ所の核施設のうち1~2カ所しか廃棄しないとし、決裂に終わった。そんな中、6月末のG20を目前に中国の習近平国家主席が北朝鮮を公式訪問し、米朝首脳会談の継続を呼びかけた。G20期間中に予定される米中首脳会談で、トランプ米大統領に北朝鮮側の提案を伝えるとみられる。
一連の動きについて、太氏は「金正恩氏は習氏にG20への橋渡し役をさせたい狙いだ」と警戒。「核保有国」であり続けることが北朝鮮の外交原則であるとし、次のように述べた。
「(次の米朝首脳会談で)金氏は、ハノイでトランプ大統領が求めた通り、5つの核関連施設を開放もしくは廃棄するかもしれません。(中略)もし金氏が、過去の核施設を(廃棄することと)引き換えに、現在保有している核ミサイルをさらに数年間保持することができようトランプ大統領を説得できたとすれば、それは北朝鮮が『新たな核保有国』として認められたということを意味します。これが、彼らの基本的な戦略です」
「残りの人生は金体制崩壊のために」
その他、「リビア方式」と呼ばれる短期間の一括的な非核化を求めるジョン・ボルトン米大統領補佐官に対しては、「(北朝鮮問題の)解決策の一部になり得る」と、その強硬姿勢を肯定。経済制裁については、「北朝鮮にミサイルが存在する限りアメリカは経済制裁を強めるべきだ」と強調した。
また、金体制に関しては、10年から20年すれば金体制への忠誠心を持たない若者が政権の座に着き、自然と崩壊するだろうと予想。北朝鮮の本質を世界に知らしめるとともに、国外にいる同胞を啓蒙することによって変化を生みだし、「残りの人生をかけて北朝鮮のシステム崩壊を加速させるため最善を尽くしたい」と語った。
太氏が話すように、北朝鮮は核ミサイルの放棄に激しく抵抗するだろう。
しかし、韓国の文在寅大統領が北朝鮮に融和姿勢を強める中、このままでは核ミサイルを持った南北統一朝鮮が誕生する可能性もある。日本はアメリカ頼みの現状だが、世界最大の核保有国であるロシアにも協力を要請し、日米露の三国で北朝鮮に圧力をかけるべきだ。そのためには、早急な日露平和条約の締結が求められる。日本政府は今、決断を迫られている。
(片岡眞有子)
【関連記事】
2019年4月27日付本欄 正しい者は強くなければならない── 大川隆法総裁「信仰を護る強さ」講演
https://the-liberty.com/article/15713/
2019年5月5日付本欄 トランプ大統領の「親心」が分からない金正恩 国を守りたいなら非核化を