米国の外交政策に影響力を持つことで知られる米外交問題評議会の電話会議(2月28日)で、本誌4月号に登場したアメリカの宗教学者レザ・アスラン氏が、宗教学の第一人者、ハーバード大のハーベィ・コックス教授(本誌2月号にコメント掲載)などの識者やジャーナリストの質問に答えている。その中で、メディアがイスラム改革に与える影響に関する部分ではこう述べている。
・ ムスリムはコーランの解釈などに悩むと、権威ある宗教機関に聞くよりfatwa-online.comやislamonline.netなどのサイトで法的見解(ファトワー)を検索するようになっており、これがイスラム内部の宗教改革を促している。
・ インターネットによって教えの独占状態が崩れ、権威が崩壊しつつある。
・コーランのアラビア語以外への翻訳同様、ネット社会はイスラム内部の改革に大きな影響を及ぼしている。
言わば、ルターが万人司祭主義を唱えて行ったキリスト教内部の宗教改革と同様の現象が、イスラム教内部で起きているのだ。日本よりムスリムとの問題が身近なためか、アスラン氏の本は米国で12万部も売れたという。
この種のシンクタンクで、若手の宗教学者とジャーナリストたちが活発な議論を交わしているということは、宗教は今後ますます、世界で中心的な役割を果たしていくと予測される。英語にはReligious literacy(宗教的識字率)という言葉がある。宗教について“文盲”であっては、もはや世界の情勢が読めない時代になりつつある。
国内の世論を啓蒙すべき立場にある日本のジャーナリズムも、そうした公的な言論空間を設けねばならないことを知るべきだろう。(HC)
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