2019年2月号記事
国造りプロジェクト Vol.03
わが子がドローンに救助される日
「死者ゼロ」への未来型防災
大阪北部地震、巨大台風の多発、西日本豪雨、北海道胆振東部地震─。
天災が"忘れる前"にやってくる時代になった。
災害の常識が変わるなら、防災の常識も変えるときではないか。
(編集部 馬場光太郎、山本泉)
contents
わが子がドローンに救助される日 - 「死者ゼロ」への未来型防災 - 国造りプロジェクト Vol.03
「方々から『助けて』という叫び声が聞こえてきた」
2018年7月の西日本豪雨で、全域が水没した岡山県倉敷市真備町地区。いつものように会社で仕事をしていた男性は、建物の屋上に逃れ、目の前の光景に立ち尽くしたという。
「水没しかけた自販機の上にいた人は、こちらに向かって助けを求めていました。でも、何もできなかった。男性が屋上に流れつきました。かすかに息はありましたが、顔色が真っ白でした。自分もこのまま……。そんな思いが頭を過ぎりました」
豪雨では、220人以上が犠牲になった。日本人は、自然の猛威に改めて息を呑んだ。しかし、それで終わっていないだろうか。「これほど多くの人が亡くなるなんておかしい」という思いを、どれだけの人が持っただろうか。
振り返れば、治水・避難・救助の3段階で犠牲者を減らすチャンスはあった。真備町地区も水害は予想されていたが、河川改修が間に合わなかった。岡山、広島、愛媛の3県では広い範囲で避難指示が出たが、実際に避難した人は4.6%だけだった。自衛隊などの人手不足は深刻で、多くの人の救助が間に合わなかった。 解決すべき問題は山積みであり、人智を尽くす余地はまだまだあるはずだ。
軍事では人工知能の導入、宇宙兵器の登場など、猛スピードで技術が進化している。同じく命にかかわる防災分野は、それだけの進化をしているだろうか。
天然痘は、歴史上幾多の文明を脅かす、抗いがたい自然の猛威だった。しかし現在では、ワクチンやその接種体制が飛躍的に進化し、ほとんど根絶された。
防災においても、「昔は災害で当たり前のように人が亡くなっていた」と言われる時代を、目指せるのではないだろうか。
本記事では、「死者ゼロ」を目指すための防災構想を紹介する。
ドローン救助隊出動!
ロボットがあなたを見つける
津波のときだけ現れる堤防
電源が空から"降って"くる
遠くの高台より足元の地下
「階上都市」でお年寄りも安心
「防災」から「弱災」へ