2019年2月号記事

第76回

釈量子の志士奮迅


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幸福実現党党首

釈量子

(しゃく・りょうこ)1969年、東京都生まれ。國學院大學文学部史学科卒。大手企業勤務を経て、(宗)幸福の科学に入局。本誌編集部、常務理事などを歴任。2013年7月から幸福実現党党首。

釈量子のブログはこちらでご覧になれます。

https://shaku-ryoko.net/

人智を尽くし防災大国へ

清水寺で発表された今年の漢字「災」が表すように、2018年は全国各地で災害が発生し、現在も生々しい傷痕が残っています。

7月の西日本豪雨の直後に訪問した広島県には、その後も3度入りました。12月になっても中山間地域では山肌が露出し、なぎ倒された木が散乱している場所を見かけます。地元の方は「このまま来年の夏に大雨が降れば、また下流が大変なことになる」と心配していました。

9月の台風21号の後には、和歌山県の被災地を訪問しました。

関西国際空港に近い雑賀崎工業団地では、高潮で堤防が決壊し、工場や事業所の一階部分が破壊。窓や壁が全て流され、鉄筋の柱だけが残っている状況は津波被害とほとんど変わりません。ちょうど海岸線沿いのテトラポットが途切れ、堤防が薄くなったところから海水が侵入してきた様子が見てとれます。

こうした、「いまだ塞がれていない災害の傷痕」、そして「次の被害につながりかねない防災の穴」が、全国に存在しています。これだけ災害が激甚化しつつある今、日本は対策のギアを上げ、災害による犠牲者を出さないために、人智を尽くすべきです。

西日本豪雨で被害を受けた岡山県倉敷市真備町地区の様子。

防災大国への3つの柱

防災大国化に向け、いくつか提言してみます。

(1)まずは堤防などのインフラ面です。民主党政権が標榜した「コンクリートから人へ」ではなく、「コンクリートも人も大事」という考え方が必要です。

そもそも防災インフラへの予算は、小泉政権時から大幅に削られましたが、その水準は安倍政権下でも改善していません。

一連の災害を受けて安倍政権は、「国土強靭化」のために3年間で約7兆円規模の投資を行うと表明しています。

しかしこれも「焼け石に水」。土木学会によると、南海トラフ巨大地震で予想される被害額は、1410兆円です。その被害を4割強抑えるために必要とされるインフラ投資額は、ある試算によると30兆円。少なくともそれくらいの投資は、未来事業債を発行するなどして行う必要があります。もちろんこうした投資は、数百兆円の損害を軽減し、かけがえのない人命を守る「資産」となります。

(2)次に防災教育です。大人でも「警報」「注意報」「避難勧告」「避難指示」の違いが分かっている人がどれだけいるでしょうか。「いよいよの時は、誰かが家に来て教えてくれるだろう」といった主体性のなさが、豪雨などにおける犠牲者を増やしていると指摘されています。

基本は国防と同じ発想ですが、「自分の身は自分で守る」ことです。このいのちを守る基本原則を浸透させるべく、学校の授業に防災を本格導入し、自動車免許更新時に防災映像を見るようにするなど、腰の入った防災教育を行う必要があります。

また一人では逃げられない人を「近所」で助け合う土壌も根付かせるべきです。地域の人たちがまずはお互いのことを知る機会を設けるなど、失われたコミュニティを復活させる取り組みが必要です。

(3)そして最後に、防災の未来化です。軍事や流通で革命を起こしつつあるドローンは、捜索・救助でも活躍できます。和歌山県白浜町で視察した企業はAIアナウンサードローンというものを開発していました。プロペラ音と放送音が干渉しない特殊なスピーカーで、100メートル上空から25カ国語で避難を呼びかけます。政府はこうした救助力向上の研究を支援すべきです。

その他、ロボットや新型堤防など、さまざまなテクノロジーの種を育てる必要があります。

智慧を総動員させよ

政府は17年、「現在の科学的知見では大地震の予知はできない」という結論を出し、予知を前提としない防災対策に大きく舵を切りました。

しかし、大地震の直前に地磁気の異変や、地震雲の出現など、さまざまな兆候が見られると主張する人もいます。また、古来より伝わる「政治や人心の乱れが天変地異の原因」という考え方も、根本原因として捉える必要があります。

「日本人のいのちは断々固として守るのだ」という決意で、あらゆる考え方を否定せずに探究することが、「人智を尽くす」ということなのではないでしょうか。

文明の歴史は、自然災害と人間の智慧とが戦ってきた歴史でもあります。防災は、まさに人類の進化をかけたテーマなのです。今こそ、日本の智慧を総動員して、「災害で人が死なない未来」を本気で目指そうではありませんか。

幸福実現党はこれからも、いのちを守り、繁栄を実現する提言を行ってまいります。