リビアに対する軍事介入が検討される中、米外交問題評議会会長のリチャード・ハース氏が、8日の米紙ウォール・ストリート・ジャーナルへの寄稿で、アメリカはリビア問題に深入りすべきでないと述べている。以下に要旨を紹介する。

・ 議論されている飛行禁止区域の設定が効果的なものになるかは定かでなく、他の軍事行動に関しても同じである。

・ カダフィ大佐が専制君主であるとしても、政権打倒が民主主義の樹立につながるとはかぎらず、他の部族やイスラム過激派の台頭を許す恐れもある。

・ そもそもリビアは政治的にも石油市場への影響からいっても重要な国というわけではなく、エジプトのスムーズな民主政移行やサウジアラビアの安定、イランの核開発阻止など、できることに力を注ぐほうがアメリカにとって得策である。アフガンやイランですでに米軍がオーバーストレッチの状態にある中、国益が希薄な地域での曖昧な政策目標の下の軍事介入は避けるべきである。

・ 何もするべきでないと論じるものではないが、行動と利害(ステーク)が釣り合わなければならない。資産凍結や武器禁輸、戦争犯罪でのカダフィ氏訴追のアクション、難民の保護区域の設定などが妥当である。

・ これらの政策ではカダフィ政権は生き残るかもしれないが、今回の件を経て政権の力は低下するだろう。リビアでの実際のアメリカの国益の程度を考え、現実的な政策を採るべきである。

リビア政変が始まった当初、カダフィ大佐への非難をオバマ大統領が明確にしなかったこともあり、リビアへの軍事介入を求める声が米国内には根強い。民主主義を推進すべきという理念はわかるが、ハース氏の言う通り、国益に基づいた現実的な計算をしなければ、責任を負いきれなくなる事態ともなりきれない。独裁者を許すなという世論の建前がある以上、何もしないわけにはいかないだろうから、結局は事態が拡大しすぎない程度の中間策が落としどころなのかもしれない。

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