《本記事のポイント》
- ミサイル防衛「イージス・アショア」の不要論を唱える朝日新聞
- 主張の根拠は、北朝鮮の脅威が低下している今、導入しても将来無駄になる?
- だが、北朝鮮情勢は将来どうなっているか分からず、最悪の事態に備えるべき
陸上配備型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」の導入費用が、当初の想定よりも約2倍近くに膨れ上がることが分かり、一部メディアの反発を招いている。
政府は、「北朝鮮の脅威は変わらず、イージス・アショアは必要だ」(小野寺五典防衛相)との立場を示しているが、これに朝日新聞はかみついた。
同紙は1日付社説で、このように政府を批判している。
「ようやく芽生えた緊張緩和の流れに逆行するだけではない。費用対効果の面からも、やはりこの計画は、導入の是非を再考すべきだ」
「配備候補地となった秋田、山口では、性急な政府への反発が強まっている。政府が目指す2023年度の運用開始は、米側の事情もあって、25年度以降にずれこみそうだ。その時になって、巨費を投じた陸上イージスが無用の長物になっていないか。今こそ、徹底的な議論が求められる」
朝日新聞の見立てによると、北朝鮮の脅威が後退している今、イージス・アショアを巨額の費用で導入しても、将来不要になる可能性があるという(ちなみに、北朝鮮の暴走を食い止めたのはトランプ米政権の成果だが、同政権に批判的な朝日新聞を含む多くのマスコミは、それを無視している)。
約5年後の北朝鮮情勢は誰も分からない
その主張は一見、筋が通っているように見えるが、安全保障の基本をおさえていない「暴論」であろう。イージス・アショアを導入しても、すぐに本格運用できるわけではなく、最低でも数年はかかる。そのころに、北朝鮮の非核化が実現している保証は、どこにもない。
朝日新聞も、「米朝の対話が続く限り、軍事衝突のおそれが遠のいたのは確かだ。しかし、それでも現状は融和ムードの延長にすぎず、米朝間の緊張は再燃しうる」(7月10日付社説)と述べ、米朝交渉がいつでも決裂する可能性を認めていたではないか。
イージス・アショアの運用が始まる2023年度以降の北朝鮮の見通しは、誰も分からない。さらに、隣国・中国の軍拡もとどまる気配はなく、日本を取り巻く安全保障環境は厳しさを増している。
合理的な範囲内で、最悪の事態(もし)に備えることこそが、安全保障の基本である。当面の外交情勢の変化によって、長期的な視野で行われるべき国防体制が左右されてはならない。それこそ、北朝鮮が何度も演出してきた「融和ムード」に、日本国民は騙されることになる。
日本は、同盟国のアメリカなどと連携し、国防体制の強化・対北制裁路線を堅持すべきである。
(山本慧)
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