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《本記事のポイント》
- 税の重さは、社員・社長より"経理妻"が実感!?
- ただでさえ苦しい「資金繰り」を、さらに税金が脅かす
- あまりに複雑な税制で、「倒産危機」を招くことも
日本企業の8割以上が、小規模事業者だ(*1)。その多くにおいて、経営者の妻が経理を支えている。
経理担当となると、税金周りの仕事も担うことになる。帳簿をつけ、領収書を集め、確定申告の書類を作成して、納税手続きをし、そのための資金繰りに走り回る。
会社の財務状況など知る由もない社員は、「給料が少ないのは会社がケチだから」などと思っているかもしれない。
社長であっても、財務状況を細かく見なければ、「使える資金が少ないのは収入が少ないから」と思うかもしれない。税金が、どれだけ自分たちの首を絞めているのかは、意外と実感しにくい。
しかし"経理妻"は、「小さな会社の経営に、税金がどれほど会社に負担を強いてリスクとなっているのか」を目の当たりにしている。そんな声に耳を傾けてみた。
(*1) 小規模事業者とは、従業員が製造業で5人以下、サービス業で20人以下の事業。
苦しい「資金繰り」を、さらに税が苦しめる
小さな会社は、豊富に資金を持っているわけではない。「仕入れ代や給料の支払い、借り入れの返済などの期限までに、お客様からの支払いがあるだろうか」といった資金繰りの悩みは、毎月尽きない。
そんな中、容赦なく現金を吸い取っていく税金の支払いは、経営を脅かすものになっている。
大阪府の不動産屋で、経理を任されている社長妻Aさんはこう嘆く。
「資金繰りは毎月苦しいですよ。『今月末どうするの?』ってなる時はあります。先月なんて、確定申告して払う税金が決まったのに、手元にお金がないんです。『倒産するかも』って発狂しそうになりました。『どうするの、ないよ? 自分の家を売る?』って。そうなれば、お給料を払うどころの話ではなくなります」
もちろん、利益が出たからこそ、そこに税がかかることになっている。しかし、お金が入るタイミングと、納税のタイミングが異なるため、資金ショートが起きる可能性はある。Aさんは、事実上の税金である社会保険料についてこう語る。
「社会保険料って、前年の収入から計算されるんです。だから、『去年の業績はよくて、保険料が高くなったけど、今年の業績は悪かったら、資金がなくて払えない』っていうことがありえるんです」
税金未払い状態は、融資など、経営の他の面にも悪影響を及ぼす。
「国民金融公庫とか、中小企業の支援とか、お金を貸してくれるところもあるけど、税金払えてないと貸してくれないですからね。一度、そういうところに相談に行って、『こんな税金払えるなら、あんたのとこになんか来んわ!』って言ったことがあります(笑)」
税金を期限までに納付できなければ、年率10%前後の「遅延税」が取られる。また、通常の借金と異なり、民事再生のような"踏み倒し"もない。まるで「サラ金」の世界だ。
こうした不測の事態を防ぐには、巨額の資金バッファーをつくっておくしかない。Aさんはこう語る。
「毎年、(納税直前の)3月と4月の売り上げは、ほとんど"納税準備金"として、できるだけ手をつけずに置いておきます」
使えるお金がこれほど減ることは当然、企業の動きを大きく制約する。
複雑すぎる税制に引っかかり倒産危機
税務署的には、「次年の税金も綿密に計算し、納付するときにお金があるように、資金計画を立てればいいではないか」という話なのかもしれない。しかし、会計の専門家ならまだしも、ただでさえ素人で資金繰りに試行錯誤する「経理妻」に、そこまで要求できるほど、日本の税制はシンプルではない。
東京都内の設計事務所で、経理を任されている社長妻Bさんはこう嘆く。
「うちは年末決算なので、年内の売上げや経費にもとづいて、翌3月に支払う税金が決まります。
昨年末、必要備品を数百万円分、インターネットで発注したんです。その備品は、年を越して事務所に届きました。年内に注文決済をしたので、当然、昨年の経費に入ると思いますよね。
でも後から聞いたら、『税務上は、使える状態になったタイミングではじめて経費と見なす』っていうんです。だから、数百万円分の経費を無視した税金がかけられました。その他にも出費が重なったこともあり、資金が足りなくなりかけたんです。本当に倒産を覚悟しました。
できるだけ税理士に相談しながらやっても、こういうルールにひっかかるんです。私自身、10年以上経理をやっていますが、未だに初めて耳にするルールばっかりです。あまりにも制度が複雑すぎます」
日本の税額の多さや、制度の複雑さは、確実に、小さな会社の経営をリスクにさらし、経済活動を圧迫していると言える。(後編へ続く)
(ザ・リバティWeb企画部)
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